E36 325i Cabriolet【スタビライザー交換】①乗り心地は改善出来るか?

久しぶりにサスペンション系のお話
今回のお題は「スタビライザー」 
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今まであまり理解が進まなかったのでサスペンションを全面的に作り直したM3でもノーマルを使っている部品です。
いろいろ調べて考えが少しまとまってきたので実験してみます。

よくよく考えてみたら、
スプリング系をそっくりノーマルを維持している325i Cabrioretは格好の実験素材
しかも、最近ちょっと足回りにちょっと不満が、、、

この「スタビライザー」って部品
サスペンションの前後ロールバランス調整に使われる補助スプリングの一種で
sway-bar-operation
左右のサスペンションアームをトーションバーで接続し、ピッチ方向はフリーにマウントしてロールのみに作用するスプリング

対照的に、ロール方向をフリーにマウントしてピッチ方向に作用する補助スプリングは「コンペンセイター」
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あまり聞かない補助スプリングですが、
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ポルシェ356のピッチング制御に使われています
減速時のリアの伸び上がりを減らして、スイングアクスルのポジティブ側へのキャンバー変化を抑制し
加速時の過大なテールスクワットを防止してトラクションを確保を狙ったと考えます

今なら「フロントに柔らかくて長いバンプラバーをバンプタッチ寸前で組み込んで補助スプリングに使う&リアにバリアブルレートスプリング」って方法かなぁ

スペース効率は最悪だけど、
「コンペンセイター+スタビライザー」でもサスペンションとして成立しますね(笑)

コンペンセイターの考察はコレくらいにして、、、、

スタビライザーの役割ですが、、、
「Stabilizer(スタビライザー)」
「Anti-roll bar(アンチロール バー)」
「Sway Bar(スウェイ バー)」
など地域によって呼び名は異なりますが
名前のとおり「安定性を作り出す」「ロールを防ぐ」って事

スタビライザーの作用プロセスを見直すと、
①旋回により車両のバネ上質量は横方向の加速度(g)に比例して重心(CG)に横力を生成します。

②重心位置(CG)はロール軸より上に位置するので横方向の力によりロール軸の周りにモーメントが発生し車体をロールさせます
ロール軸とはフロントとリアのロールセンターを結ぶ線で、通常は前下がりに設定されています。

③ロールモーメントは「サスペンションアームジオメトリーにより生ずるアンチロール効果」 「スプリングによるロール剛性」 によって支持されます

ココでロール剛性のみに作用する「スタビライザー」を追加することにより、
サスペンションのスプリング(バウンス)を硬くすることなくロールを減らすことが可能になり
乗り心地の低下を抑えて車両運動性能を向上する事が出来ます。

だけなら良いんですが、、、、
やっぱり使い方(レート)次第なんですよね(笑)

スタビライザーはバネ鋼の弾性変形を使って「ねじれ」に抵抗する「トーションバースプリング」で
「ばね材料の弾性係数」
「バネ鋼材の直径の4乗」
「レバーアームの長さの逆数」
に硬さは比例します。

簡単に言うと
「固いバネ鋼」
「太いバネ鋼」
「アーム(バー中心と作用点)が短い」
ほど硬いって事で
硬いほど左右の車輪を相対的に動かすのに必要な力(ロール対抗力)が大きくなるのでロールが減少するって事になります。

製品として販売されているスタビライザーはバネ鋼は選べないので、
「太さ」と「アーム」が勝負になり
images (4)
スタビライザーの太さで大まかな固さを選んで、
アーム(取り付け点)で微調整って事になります。

左右のサスペンションアームをロールにのみ作用するトーションバーで繋ぐので
スタビライザーのレートが高くなるほど、沈み(Out側)のサスペンションに伸び(In側)が追従する動きになり
あまりに高レートのスタビライザーを組んだ場合は伸び(In側)の伸びストロークを阻害してトラクションが損なわれます。
このサジ加減が難しい部品ですね、、、

しかも、、、、
各車専用設計になるので固さの種類が数種類しか選択できず、
部品代が高いので選択ミスのダメージが大きい

乗り心地に関して考えてみると

最初は乗り心地が悪くなる要素として
「乗り心地が悪くなる速度域」がスタビライザーのレートによって変化します
スタビライザーのレートが高くなる事により、左右位相の路面不正を通過するときには、ホイールレートが高い状態となり
バネ上固有振動数=共振周波数が高くなるので、振動伝達率λ=1以下になる入力周波数が高くなります

低速では路面からの入力周波数が低く振動伝達率λ=1以上の入力はバネ上に振動が伝わり路面の凸凹を受けてバネ上が揺さぶられます。
速度が上がり路面からの入力周波数が高くなり振動伝達率λ=1以下の領域になると
バネ下は自由運動に入るのでボディには振動が伝わらなくなり乗り心地への影響はなくなります。
振動伝達率 

スタビライザーを強化すると路面不正を拾わなくなる速度域が高まり、「ユサユサとロール方向に揺さぶられる速度域」がより高速側に広がるって事になります

「乗り心地が良くなる使い方」は、、、
ロール剛性を作り出すためにスプリングレートを高めていたセッティングの場合は、
スタビライザー強化によりスプリングレートを下げても同じロール剛性を維持する事が出来るので、
振動伝達率λ=1が以下になる入力周波数が低くくなり路面不正を拾わなくなる速度域が低速側に広がり
乗り心地が良くなります

同時にメインスプリングレートに対して設定していた減衰率(c/cc)を維持したまま減衰力の総量を少なくする(減衰力を弱める)事が出来るのでダンパー成分でも乗り心地が向上します

もうひとつの「乗り心地が良くなる」使い方は、
車両のサスペンションセッティングに対して、過大なロール方向の入力が有る場合
高い旋回gによる深いロールでOut側のサスペンションストロークを使ってしまうと、
路面不正を吸収するために必要なストロークが確保できずにフルストローク(バンプタッチ)が発生し
安定性が損なわれるケースも考えられます。

この点では「ローダウンスプリング+強化スタビライザー」の組み合わせは必然で、
車高を下げて低くなったロール剛性を補完しています。
メーカー系チューニングパーツもスプリング+スタビライザーの組み合わせで設定されていますし
社外品スプリングメーカーからスタビライザーも同時にラインナップされていますね
一度、アイバッハやH&Rのスプリングとスタビライザーをセット交換して試してみたいですね

車高下げる気はないので自分の車じゃ試せないなぁ、、、

今のところ理解したのはココまで
やはりスタビライザーを変更するのは結構難しい

こうやって考えてみると、スタビライザー強化ってツインスプリングとは相性悪そうですねぇ、、、
ロールモーメントの縮み(Out側)のファクターをトーションバーで伝えて伸び(In側)を抑える
コレはIn側のスプリングレートを相殺する要素になってロールを減らしている

ツインスプリングは剛性レートを使って縮み側のレートを高く、伸び側のレートを低く設定してロールを抑えているので
スタビライザーの要素が強いとIn側が伸びずにトラクションをロスする
元々、ロール剛性が高く設定できるのでスタビライザーまで強化すると伸び側に対してレートが高すぎになるのかもしれませんね

次回は実際にスタビライザーのレートを計算してみます。

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