サスペンション独学ノート 2017年まとめ⑦「スプリングシート スラストベアリング」

スプリングシートへのスラストベアリング組み込みは部品価格が安い割には効果的な手法です。
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「コイルスプリング」は、真っ直ぐなバネ鋼(トーションバー)を省スペース化のためにコイル状に巻いたスプリングです。

このコイルスプリングが伸縮すると、コイル形状が変化するのでスプリングエンドが回ります。
スプリングツイスト
ノーマル形状スプリングではスプリングシートがスプリング端にぴたりと噛み合うのでスプリングが回ることはありませんが
直巻きスプリングは、基本的に平面のスプリングシートに乗っているのでスプリングが状況次第で回ります。

この「状況次第で回る」は動作安定に欠け、更に異音発生につながるので、
テフロン性のスプリングシートでスプリングを滑らせて応力を抜いていましたが
より低フリクション化を進めてスプリングのストロ―クを滑らかにするためにスラストベアリングを用います
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このスラストベアリングの効果は大きく、
ストロークに伴うスプリング捩れ回転力がベアリングにより開放されるので
●サスペンションの細かな動きが良くなり乗り心地が向上、
●スプリングシートの緩み防止、
●プリロード調整が楽になります、

特にピロアッパーを用いるフロントストラット車には必須部品で、
フロントストラットはサスペンション軸と転舵軸を共有する構造なので、
ノーマルのアッパーマウントには転舵用のベアリングが組み込まれています。
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ノーマル形状転舵箇所
ここのベアリングが無いとステアリングが切れません、

ノーマルアッパー+車高調の組み合わせにしてみると
車高調+ノーマルアッパー
ベアリングが残るので転舵フリクションは変わりません

このベアリングが組まれたノーマルアッパーマウントをピロボール支持のピロアッパーに交換すると
ボールベアリングよりピロボールの方がフリクションが大いので
力はよりフリクションの少ない部分に逃げるので、
ダンパーシャフトとケースの間で転舵します。
車高調+ピロアッパー
このフリクション増大で
ステアリングが重くなり、セルフアライニングトルクでのステアリングの戻りも悪くなります。

「ピロアッパーに変えて、ステアリングがどっしり安定した!! 凄い効果だ!!」なんてインプレは、
残念ながらベアリング支持からピロボール支持になって転舵フリクションが増えているだけです。

転舵箇所になったダンパーシャフトとケースの間にはスプリングとスプリングシートがあるので、
ステアリングを切る事でスプリングも捩じられ、捩じられたスプリングが一気に滑り「弾き音」が発生します。
これが、ストラット車に車高調組んだ時の「バキバキ音」の正体です。
また、このスプリングが一気に滑る時の衝撃はインパクトレンチのような効果をもたらし
固く締めこんだスプリングロアシートを緩める原因にもなっています。
 
 
 ちなみにノーマル形状サスペンションとピロアッパーの組み合わせは最悪です。
転舵箇所はフリクションの高いピロボール部分なので「ステアリングはフリクションの塊」になり
セルフアライニングトルクが負けてステアリングが自然に戻らなくなります。

このスラストベアリング追加は2009年初期導入のプラスチックベアリングから始まり、2011年に金属製スラストベアリングに変更して8年近く使っていますが、デメリットは今のところ見つからず、
スラストベアリング追加
スラストベアリングのインプレ
安価で効果的なオススメできる改善点です。
必要な数量は、各スプリングシートに1set(1台分4個)でOK
(上下に組んでもコストが倍になるだけで効果は変わりません)

部品自体は、一般流通している規格品のスラストベアリングで十分なので1台分組んでも1万円ほどです。
E36M3 フロントサスペンション フリクション低減とプリロードセッティング
Φ65 Φ60ニードルローラーベアリング

組み込む場所は、水掛りを考えてスプリングアッパーシート側に組みます。
ロアシート側にも組み込めますが水が通る場所なので,
あっという間にグリスが流れて錆びて部品がゴミになります。

スラストベアリングに詰め込むグリスは、耐水性と耐流れ性を考慮して
固いシリコングリスを推奨します。
(高速回転したり、極低フリクションを求められている箇所ではないので、低粘度グリスやOIL系だとすぐに流れ落ちてしまいます。)
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僕が使っているのはワコーズのブレーキグリスです。
スラストベアリングに最適なグリス

時々、足回りを分解した時にベアリングを洗って新しいグリスに詰め替えてあげてください

まぁ、、、どんなに気を使っても劣悪な環境にベアリングを裸で晒す事には変わらないので、
「消耗品」と割り切って使い、
我慢できなくなったり壊れたら交換で十分な部品です。

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