サスペンション独学ノート 2017年まとめ⑩ 「バネ上の運動とバネ下の運動」

バネ上固有振動数で「車両の用途を決める」って事から始まりましたが、そもそもバネ上固有振動数ってどんな物でしょう?

イメージが無いと理解が難しいですね
固有振動数はすべての物が持つ固有の振動数でこの振動数を与えた場合は無限大運動となります。

なんだか難しい話ですが、「ブランコの周期運動」や「水風船ヨーヨーの周期運動」の振動数(周波数)です。

両方とも特定の周波数で力を加えると
「一定の周波数」で運動し、
力を加えると振幅が増えていきます。
この「一定の周波数」が固有振動数=共振周波数です。

車のサスペンションを考える場合は2つの固有振動数を考える必要があります。
一つは、運動性と操縦性に関わる「ばね上固有振動数」
もう一つは、路面追従性に関わる「バネ下固有振動数」です

この固有振動数によるバネ上とバネ下の関係は
「走行中の観光バスのボディとタイヤの動き」を観察するとよく見えてきます
(物がデカくて動きの差が大きいので特に見やすい)
●バスのボディはゆっくりと固有振動数で上下運動していて
●バネ下のタイヤは路面追従しながら忙しく上下しています。

この事から「バネ上とバネ下の動きのイメージ」は
1G車高位置からバネ上とバネ下で2種類の周波数で動いているって事で、
E36 固有振動数
バネ上は1g車高で飛んでいるのと同じ状態になっていて
バネ下はボディの重さで路面に押し付けられている
こんなイメージが出来ると思います。

最初に「バネ上固有振動数」から
これはスプリングに支えられたボディ(バネ上)の持つ固有振動数で、スプリングレートと重量により変化します
今回は例として自分のM3の設定である2.0HZを考えてみます。

 「バネ上固有振動数2.0Hz」とは、、、
「1秒間に2回まではバネ上(ボディ)が上下する事が出来る」って事です。
コレは普通の乗用車が1.0Hzなのでかなり早い動きを許容します。
同じ加減速、旋回Gが入力されてもスプリングが硬いので「姿勢変化自体が少なく姿勢が戻るのも早い事」を表し
運動性が向上していることを表します。
 逆に観光バスなどの柔らかいサスペンションの固有振動数は低くゆったりと船のようにバネ上が動きます。
バネ上固有振動数より遅い速度の入力はスプリングを解してボディに力が伝わり、ボディが動きます

2Hz以上
車体のロール&ピッチ 段差をゆっくり乗り越えたりする動きがコレにあたります。
遅い入力に対しては減衰力をシッカリ出して動きを止めないとロール&ピッチスピードが抑えられず操舵性と安定性が悪くなるし
「車酔い」の原因になるって事ですね

これは「水風船ヨーヨーをゆっくりと上下させている」状態です。
手の動きに従ってヨーヨーもゆっくり上下します。

もう一つの「バネ上固有振動数2.0Hz」の特徴とは、、、
「1秒間に2回以上バネ上(ボディ)が上下する事は出来ない」って事です。
 つまり固有振動数以上の入力を受けてもバネ上は1秒間に2回以上のバネ上(ボディ)が上下することができないので、
運動はバネ上に伝わりません

2Hz以上
バネ上固有振動数の3倍以上の周波数の入力になるとバネ上への入力は伝達しなくなり、(ボディは動かず)バネ下が路面追従します

 低速でゴツゴツ感のあるサスペンションが、ある速度域を超えると振動が消えてフラット感が現れるのは、速度の上昇に従い路面の細かい凸凹を通過する速度が上がり
入力周波数がバネ上固有振動数を超えて免震領域に入るからです。
実際にはダンパーがあるので、ダンパーの高速側減衰力の影響分はバネ上に伝わります。
 
これは「水風船ヨーヨーを吊るした腕を思いっきり細かく早く振っている状態」です。
手は素早くバタバタしてるのにヨーヨーは一点で動かないですよね

この特性を使ったのが「免震マウント」で、モーターやエンジンなどの振動体をマウントする際に
懸架スプリングの固さ(レート)を調整することで固有振動数を入力周波数の1/3以下にして振動伝達率を0にしています。

 以上の理由から路面不正によるサスペンションの底付きは対策は、
スプリングレートUPでの対応は不可能な事が理解できます。
「ハーシュネス」と呼ばれる15Hz以上の早く鋭い入力を受けた場合、
バネ上固有振動数以上の3倍以上の入力なのでバネ上は動かずバネ下だけで処理されます
この時に縮みストローク量より大きい凸の場合にバンプラバー域まで使い切り、
吸収しきれないエネルギーがボディを叩き「バンっ!!」って打音とともに鋭いショックが伝わります。
これが「底突き」の状況です。

 底付きを感じる場合はプリロードを掛けて縮みストロークを増やしてバンプタッチまでの余裕を作る
もしくは、ダンパーの縮み側高速域の減衰力を高めます。
もちろんダンパーの縮み側高速域を固めた場合は底突きしない代わりにゴツゴツ感は増します
(ダンパーストロークに減衰力でブレーキを掛けるのでどんどん足が動かなくなる)

確かに、運動性&操縦性無視でめちゃくちゃ硬いスプリングを組んでバネ上固有振動数を高めて、
路面不正からの入力がバネ上固有振動数を超えないように、ゆっくり走れば底突きはしませんが、、、

何したいんだっけ?(笑)

車重に対して固いスプリングと減衰力が高いダンパーの組み合わせだと
「空荷のトラック」みたいな乗り心地になりますね

次に「バネ下固有振動数」を考えると
これはボディを基点としたスプリングで路面に押し付けられているバネ下の固有振動数で、スプリングレートとバネ下重量により変化します。

このバネ下固有振動数はボディ(バネ上)に対して重量が軽いバネ下とスプリングレートで作られる固有振動数なので7Hz以上にもなり
バネ上に比較して3倍以上も早い運動に追従することができます。
これは「バネ下の路面追従性」に直結するので、純粋に数値が高いほど路面を捉え続ける事になり
タイヤが跳ねてグリップを失う時間が減少するので限界が高まります。

この事が「バネ下重量の軽量化=高性能」の指標となると考えます。
この路面追従性能を求めてバネ下の軽量化を狙いサスペンションアームやダンパーケースのアルミ化を行います。

ただし、バネ下重量の軽量化による路面追従性向上は同時に路面不正をより多くバネ上に伝えることになり
ロードノイズの増加、乗り心地の悪化などのデメリットも生じます。
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軽量ホイールのデメリット①
軽量ホイールのデメリット②
特に軽量アルミホイールは効果的ですが、路面追従性の向上と引き換えに
●タイヤとアルミホイール間での固有振動数が高まる
(同一タイヤでもホイールが軽くなることで縦バネが硬くなりタイヤの撓みが減少)
●ホイールの軽量化によるジャイロ効果の減少で直進性の悪化及び乗り心地の悪化
(ジャイロの定位特性が弱まるので脚が動きタイヤの撓みが減少)
などのデメリットがはっきりと表れます。

特にロードカーで極端な軽量ホイールは乗り心地やロードノイズ等のデメリットの方が多いので僕は純正OPTホイールに戻しました
(ノーマルホイール-1kg位が良いバランスのようです。)
軽量ホイールの用途は「大径ブレーキローター」を採用して増えたバネ下重量に対して使うのが良さそうです。

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