読み物程度の航空工学 ⑦「失速速度は変化します」

前回の失速ってなに?ってお話で出てきた
失速は低速だから発生するわけじゃないってお話です

動画は2010年予選レース中でのマットホール選手の
接水アクシデントです

アクセラレーションストール(加速度失速)を起こしています。
失速は大気速度ではなく相対気流と翼弦線の作る角度(迎え角)が限界を越えた時に
気流が翼上面から剥離を発生し揚力が減少して抗力が著しく増加します。
これが失速と呼ばれる現象です

そして失速を起こす迎え角が臨界迎え角です。
飛行規程に書かれている失速速度Vsは1g状態での失速速度です

さらに失速速度は√g x Vsで変化します。

動画の失速現象を推測するために
似たような飛行特性のエクストラ300で仮定して考えると
エクストラ300のVs=102km/hなので
各加速度(g)毎に計算すると
1g(水平飛行)では1√ x102km/h =102km/h
2g(バンク60度旋回)では2√ x102km/h =144km/h
3gでは3√ x102km/h =176km/h
4g(緩いループ) 4√ x102km/h =204km/h
5gでは5√ x102km/h =228km/h
6gでは6√ x102km/h =250km/h
7gでは7√ x102km/h =269km/h
8gでは8√ x102km/h =288km/h
9gでは9√ x102km/h =306km/h
10gでは10√ x102km/h =322km/h
で失速します。
これは臨界迎え角(失速を起こす迎え角)は一定なので、
相対気流が高速になると同じ臨界迎え角でも、より大きな揚力を発生します、

つまり「250km/hでぶっ飛ばしていてもピッチUpして臨界迎え角になると失速(剥離)します、その状態で発生している揚力は6倍(6g)」って事です、

動画はまさにその状況であり、パイロンを攻めるために深いバンクを付けてエレベーターを引いて迎え角を増やしたところで臨界迎え角を超えて失速(剥離)を起こしてます。

マットホール選手の凄いところはリカバリーで
失速の瞬間に引いていたエレベーターを緩めて迎え角を減らし失速(剥離)から回復
可能な限りバンクを戻して水平姿勢に近づき
エレベーターを引いて再上昇
これを1秒程度の時間で行っています。
(リカバリー出来たのは奇跡的ですね)

この加速度失速を利用して機体をロールさせるのが「スナップ ロール」です。
水平飛行状態からエレベーターを一気に引き、同時にラダーを蹴る事で「加速度失速によるスピン」に持ち込みます。
通常のトレーニングで行うスピン(キリモミ)は1gなのでゆっくりと回りますが
スナップロールは4g位の加速度失速スピンなので単純に考えて4倍のスピンエネルギーになり
素早いロールを可能にします。

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