E36 M3 の現状把握③

今日はサスペンションセッティング依頼を受けたE36 M3の再計測です
前回、スタビライザーレートを実測してきましたが
どうも数値が極端で信じられないので
納得できるまで調べるしかない

sketch-1607166987982
違和感を感じたのは計算値と実測値との開きが大きかった事
計算でスタビライザーレートを求める方法は以前使った式もありますが、式に数値を代入しただけで式の中身を見ていなかったので
更に調べていたらトーションバーの計算式を見つけたのでもう一度お勉強

スタビライザー(トーションバー)の計算式は

Kp=G・Ip/L

kp=ねじりばね定数(kgf・mm/rad)
G=横弾性係数=8000(kgf/mm2)
Ip=断面二次極モーメント(mm4)
L=長さ

横弾性係数Gは、
一般的なばね鋼の値を調べて
7.85×104Nmm^2を単位換算して
8004=7.85 x10^4 /9.8067
おおよそ8000kgf/㎜2

断面二次極モーメントは
物体のねじれにくさを表す数値で「断面を微小分解したものに中心からの距離をかけたもの」
って事ですが、
学が無いので式の中身は不明 
公式として使われているのでそのまま丸飲みします。

Ip=断面二次極モーメント(mm4)

Ip=nd^4/32
n=円周率=3.14
d=直径(mm)

フロントスタビライザーの直径は
M3B純正で22.5㎜なので
Ip=PI() x22.5^4/32
Ip= 25161.12

スタビライザーの長さは
以前の実測値から820mm 
ココまででスタビライザーレートを計算すると

kp=8004 x25161.12 /820
kp= 245597.08 kgf・mm/rad

求められたねじりばね定数Kpは、
トーションバーを1radねじるために必要なトルクなので

1rad(ラジアン)は「円周上で半径と同じ長さを取れる角度」なので
トーションバーに腕を連結し、腕先端を1mm移動させるのに必要な荷重に換算するには、

K=Kp/Lt^2
K=腕先端のばね定数
Lt=腕の長さ

アーム長さLtは
195㎜(M3は標準車に比べてチョット長い)

K=245597.08 /195^2
K= 6.46 kgf/mm
スタビライザーレートは6.5kgf㎜

この計算から導いたM3Bのノーマルスタビライザーレート 6.5kgfmmを見ると
前回のARC強化スタビライザーの実測値5.57kgfmmはちょっと信じられないので、
もう一度落ち着いて実測

体重計の上にパンタグラフジャッキを乗せて、スパナなんかをうまく使ってスタビライザーを押して
変位量と荷重変化を記録
5㎜のストロークで58.4kgfの変化だったので
58,5kgf÷5㎜=11.7kgf/mm

ARCの実測スタビライザーレートは11.7kgf/mm
ARCから公表されているスタビライザー強化率は191%なので
11.7kgf/mm /1.91=6.13kgf/mm
sketch-1606387562443

計算値と実測値がほぼ近似値なのでコレでOKかな、、、
本当にこんな硬いのかなぁ?
なんか計算値と実測値は近いけど違和感が残る

続いてリアを計算すると
Kp=G・Ip/L

kp=ねじりばね定数(kgf・mm/rad)
G=横弾性係数=8000(kgf/mm2)
Ip=断面二次極モーメント(mm4)
L=長さ

横弾性係数Gは、一般的なばね鋼の値7.85×104Nmm^2を単位換算して
8004=7.85 x10^4 /9.8067
おおよそ8000でkgf/㎜2

断面二次極モーメントは
Ip=断面二次極モーメント(mm4)
Ip=nd^4/32
n=円周率=3.14
d=直径(mm)

リアスタビライザーの直径はM3B純正で19㎜なので
Ip=PI() x19^4/32
Ip= 12794.23

スタビライザーの長さは
実測値から735mm 
ココまででスタビライザーレートを計算すると

kp=8004 x12794.23 /735
kp= 139326.60 kgf・mm/rad
ねじりばね定数Kpにスタビライザーのアーム長さを織り込んで

K=Kp/Lt^2
K=腕先端のばね定数
Lt=腕の長さ

アーム長さLtは270㎜
K=139326.6 /270^2
K= 1.91 kgf/mm
スタビライザーレートは1.91kgf㎜

リアスタビライザーはアッパーアームに懸架されていてレバー比は2.73なので
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スタビライザーホイールレートは
1.91kgfmm ÷2.73÷2.73
0.25kgf/mm

ロール剛性云々って感じじゃないくらい柔らかいですねぇ

この0.25kgf/mmの計算値を見て

もう一度実測すると
45㎜のストロークで49.8kgfの変化だったので
1.11kgf/mm = 49.8kgf /45㎜
実測ホイールレートは1.11kgf/mm

ARCから公表されているスタビライザー強化率は176%なので
1.11kgf/mm /1.76=0.63kgf/mm
リアのサスペンションアームが思いっきり下がった状態でスタビライザーアームに角度が付いた状態で数値が大きくなっているにしても
実測値と計算値の差が大きい
 
次回、もう一度標準車高でのアーム位置で測定が必要かな、、、

フロントはほぼ近似値に入る計算式になったので
M3のスタビライザーによるホイールレートのバランスを見てみると
フロント5.7kgf/mm
リア 0.25kgf/mm

M3のスタビライザーがストラットに取り付けられている理由もちょっと見えてきて
3kgf/mm程度の標準車に比べて 5.7kgf/mmのかなり強力なフロントスタビライザーを装備している理由は

「車両総重量での前後バランス」と「乗り心地」から設定された前後スプリングレートで
フロントの旋回性能(≒ロール剛性)を作る為に
標準車に対してフロントのスタビライザーを大幅に強化する必要があったんですね

E36 M3系(Z3 Mロードスター&クーペ含む)でフロントスタビライザーをストラット懸架に残したのはこの辺りが理由っぽい

M3系がストラット懸架にしているのは
フロントロール剛性を稼ぐためにスタビライザーレートを強化したいけど
ロアアーム懸架でスタビライザー径Upだと かなり太いスタビライザー径になるから
ブラケットに入らない=ボディ側まで設計変更になるからじゃないかな?

3シリーズ標準車は
E36初期はM3と同じストラット懸架で
中期からロアアーム懸架に変更されてます
たぶん原価低減ですね、、、
M3&初期3シリーズのスタビライザーリンクは上下ボールジョイント支持で原価が高いけど
中期&後期3シリーズのロアアーム懸架だと
上はボールジョイント
下はゴムブッシュ
ロッド長さも短いから安く作れる
その分スタビライザーの直径が大きくなって材料費も増えるけど「行って来い」で安くなったんんじゃないかな?
組み立てもスタビライザー+リンクを先にくんでロアアームにブラケットごと取り付ける方が簡単だし

スタビライザーをあれこれ調べて勉強してるけど
「標準車に対してどれだけフロントスタビライザーを強化してロール剛性を高めるか?」
の理論は不明

標準車に関しては旋回中のフロントとリアのロール剛性バランスを調整して、
前後ロール剛性バランスがピッチ軸とロール軸で大きく変動しないように調整している傾向は見えてきたんですが
M3の設定は意図的にフロントロール剛性を高めて進入でオーバーステア方向に振っている

ココから先は、
重心高とロールセンターから前後ロールモーメントを求めて旋回中の姿勢を考える必要がありそう
難しいトコロに踏み込まないとダメかぁ、、、

やっぱり今回もすっきりしなかったから
もう少しスタビライザーの勉強を進めます

次に出来る事は、、、、
E36 325i Cabrioletのフロントスタビライザーを変更してM3に近い前後バランスに設定してみて
「どんな動きをするか?」を確認してみます

大先輩!
「M社のスタビライザーセッティングのお作法で前後ロールバランスをフロント勝ちに振ったらどうなるか?」の実験します

また、面白い実験になりそうですよ~♪

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