読み物程度の航空工学⑮「尾輪式のメリット」

読み物程度の航空工学⑮「尾輪式のメリット」

前回で尾輪式飛行機の持つ悪癖を考えて、ダメっぷりは見えてきましたが
現代の尾輪式飛行機は「自虐趣味のパイロット」を満足させるために存在するわけじゃないんです、、、

前輪式飛行機が多数を占める現在で尾輪式飛行機を飛ばせるパイロットは
「前輪式の着陸? あんなの接地させればいいだけの半自動だぜっ!!」
ってチョットくらいなら威張って自慢しちゃっても良いと思います(笑)

ちなみにアメリカのFAAの免許制度だと「尾輪式飛行機」を飛ばすには
トレーニングの後にインストラクターから「エンドースメント」(ログブック裏書)をもらわないと
飛ばすことができない制度になっています。

こんな厄介な悪弊を持つ尾輪式飛行機
ちゃんとメリットがあるので絶滅せずに現役でつかわれています。
そのメリットとは、、、

①機構が簡単で軽量
「かろうじて浮いている事だけで精いっぱい」の飛行機創世当時は空力的負荷&重量物のなる着陸脚を付ける余裕なんてないので「橇(そり)」が限界
Wrightflyer

これが少し進化して実用機になってくると、地上での移動と離着陸滑走でタイヤの付いた着陸脚が必要になり、
プロペラのある機首を上に持ち上げた一番シンプルな形の尾輪式が作られます。
1024px-Sopwith_F-1_Camel_USAF
主脚2個で大半の重量を受け持つので尾輪はオマケ程度、小型機だとタイヤすら省かれて「橇(そり)」のまま
「飛行機は飛ぶ事が大切」なので、離着陸での多少の不都合は全部パイロットに押し付けろって感じですね
まぁ、、、コレしか無かった時代は「コレが当たり前の姿」だからみんな頑張って練習して乗りこなしたんですねぇ

写真の機体はWWⅠの英国戦闘機「ソッピース キャメル(Sopwith Camel)」
安定性を捨てて運動性を突き詰めた設計で真っ直ぐ飛ぶのが大変な飛行機だけど
ベテランが飛ぶと脅威の運動性で空中戦はかなり強い

でも、、、、
やっぱりお約束の「攻めすぎちゃった設計で超不安定、初心者が飛ばすと事故リまくり」ってエピソード

キャメルを愛機にする世界一有名なパイロットは「スヌーピー」って名前のビーグル犬
スヌーピー
キルスコアは不明ですが、「キャメル」を愛機に選び乗りこなすのでカナリの腕かと、、、

②不整地での離着陸に強い
尾輪式飛行機最盛期の二次大戦前までは、近代的な綺麗な舗装滑走路は少なく
広い原っぱを使って離着陸していました。
もちろん多少の凸凹はあって当たり前、雨が降れば水たまりは出来るし夏になれば草も延びる

そんな悪条件で尾輪式は使い勝手良いんです。
離陸や地上滑走での走行抵抗を少なく出来るので、
不整地で離着陸性能に優れます、

不整地での離着陸のポイントは、路面との転がり抵抗なので
如何に抵抗を少なくして失速速度以上に短距離、短時間で到達するかが勝負

不整地での前輪式飛行機は機首の前輪を保護するためにエレベーターフルアップで機首を持ち上げて離陸滑走を行います。
これは同時にAoA(迎え角)を大きく取って可能な限り揚力を発生させて主脚に掛る重量を減らして転がり抵抗を減らし
主脚へのダメージを少なくします。
もちろんフラップは短距離&不整地離陸位置にセットして揚力を増やします。
この「不整地での離陸方法」ですが、前輪式では滑走初期にどうしても主脚に掛る重量が大きくなります
C172不整地離陸
「エレベーター フルアップで機首を上げる」操縦はエレベーターの操舵で下向きに揚力を発生させて、主脚を軸に機首を持ち上げる事になるので
主脚にほぼ機体重量の全てが掛り面圧が高まり転がり抵抗が増大し離陸滑走距離が延びます。

着陸時には接地後にも前輪を路面不正から守るために意図的にエレベーターを引き可能な限り機首を上げ続けて前輪へのダメージを少なくします

それに対して尾輪式飛行機は機体重量のほとんどを主脚で支えて、
尾輪の受け持つ重量は大きくありません
(ハスキーだと、気合を入れれば一人で持ち上げられるのでたぶん20kg~30kgくらいじゃないかな?)

初期離陸滑走時には、エレベーターをフルダウンにしてプロペラ後流を使って水平尾翼の揚力で尾輪を持ち上げてしまうので
主脚に掛る機体重量は尾輪の受け持ち重量分だけ減少する事になり面圧が減少して転がり抵抗も減少して離陸滑走距離が短くなります.
カブ不整地離陸
(写真は舗装滑走路ですがエレベーターDownで尾輪持ち上げてます)

操作的にはエレベーターフルダウン&パワーONでテールを持ち上げて機軸を水平に持ち上げて,エレベーターでバランスを取りながら加速
もちろんフラップは短距離&不整地離陸位置にセットして揚力を増やします。
テールを上げると尾輪分の転がり抵抗が減少するのと同時に
プロペラ推力軸と進行方向が一致するので加速が良くなります
失速速度付近まで加速すると揚力が高まり「飛行機が飛ぼうとする」ので僅かにエレベーターを引いて機首を上げれば離陸します。

しかも応用で地上移動時にもプロペラ後流とエレベーター操舵、主脚のブレーキ操作でテールを持ち上げた状態で地上移動(タキシング)出来るので
不整地でのスタック頻度が下がります。
フラップを併用して主翼揚力を増せば主脚への荷重も少なくなるので更に走破性UP!!

③不整地用の大径低圧バルーンタイヤが装備出来る。
前輪式だと前輪を固定するフォークのサイズ変更が難しいのでタイヤ径を簡単には変更できません
それに大して尾輪式なら荷重の大半を受ける主脚のタイヤサイズ変更が容易なので
大径バルーンタイヤへの換装が可能です。
バルーンタイヤを装備した機体でのブッシュパイロットの不整地離着陸の技量は凄いです!!

アラスカに行けば教えてもらえるかな?

④重量増が最低限度でプロペラの対地クリアランスが確保できる
僕が飛ばしているハスキーは、180馬力なので駆動するプロペラも72~76inch位のかわいらしいプロペラですが
300馬力級のアクロ機や1000~2000馬力の二次大戦機になると、大出力エンジンのパワーを推力に転換するためのプロペラも大径になっていきまます。
多発爆撃機みたいに搭載する機体も大きければ逃げる事が出来ますが、
戦闘機ともなると、地上に居る時にはプロペラと地面のクリアランス確保が大変です。
都合の良い事に尾輪式なら機首上げの姿勢になるので自然とクリアランスは大きくなりますし
離陸時は尾輪をエレベーターで持ち上げて滑走するので主脚2本で用が済みます
ここでも構造がシンプルになり、軽量化が図れます。
supermarine-spitfire-mk-xiv
プロペラ機の大半がトラクター型(機首にプロペラがついて引く)が主流なのはコレが大きな理由だと思います。
プッシャー型(後ろにプロペラが取り付けられて押す)機体が主流にならなかったのは、離陸の機首上げ時のプロペラ対地クリアランスを考慮すると
どうしても長い着陸脚が必要になり、
かつ離陸滑走時の姿勢を考えると前輪式になるので
飛んでいる時には邪魔な着陸脚が大きな3本生えていて空気抵抗が増大し、
それを嫌って胴体に引き込むにしても大きくしかも3本分のシステムが必要
機内容積は削られるは重量が増えるはで不利になります。

試作機まで作った「震電」って、
A_prototype_of_J7W_Shinden
考えてみるとエンジン搭載位置だけ見ても「ジェット化」が前提で作られていたのかもしれませんね、、、、

⑤いざとなったら尾輪なんていらない(半分冗談ですが、、、)
平和な空をノンビリ飛ぶなら「整備バッチリ、不具合無し!!」が大前提ですが、
アラスカの大自然にお出掛けして河原や原野に離着陸したり、
戦争中で生死が掛った状態で何が何でも離陸しなきゃならないって時には
尾輪が壊れちゃっても適当な橇(そり)でも付けておけば何とかなります。
パンクを始め着陸脚に関するトラブルの発生確率は前輪式に比較して2/3(笑)
シンプルなのは強みでもありますね

⑥尾輪式飛行機の理解が進むと面白くなってくる
悪癖ばかりの離着陸特性ですが、
離着陸方法のバリエーションが多く操縦技術も必要
尾輪式飛行機を飛ばすのはチャレンジングで楽しいです♪

ブログランキングに参加しています、記事を気に入っていただけましたら
↓クリックしていただけると嬉しく思います。

にほんブログ村 その他スポーツブログへ
にほんブログ村


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です