読み物程度の航空工学㉑【グライダーの地上滑走安定性】

読み物程度の航空工学㉑【グライダーの地上滑走安定性】

ミザルーを合わせて「笑い」を狙った40秒ほどの動画だけど実はかなり勉強になる

主脚+尾輪のグライダーの離陸時の不安定が良く現れてます

主脚+尾輪の組み合わせでの地上滑走は尾輪式の飛行機と同じCGと作用点の関係でグランドループしやすいんです

更に重心点近い機首下フックによる曳航はノーズフックに比べてヨー軸の動安定が弱く
ヨー慣性の収束が悪い

動画の流れは
離陸開始時の翼端保持者がコントロール可能なA/Sを得る前に翼端を離してしまった事により
左翼が接地

接地による抵抗と左へヨー偏向が始まり
機首下げ操作で尾輪が浮いてしまい直進性が著しく低下
CGに近い機首下のフックによりヨー復元力が遅れて強く働き
ヨー軸の振り子運動に発展
エルロンとラダーによるリカバリーを行っているがA/Sが低くにより操縦力不足でヨーモーメントを抑えきれない

一発目の翼端接地で離脱しなかったから
中途半端な速度でヨー不安定状態で離陸
その後の離脱決心が出来なくなる

グライダーの翼端接地って
超ワイドトレッド&ショートホイールベースの尾輪式飛行機と同じ事でかなり危険な状態です
images (1)

加速により安定性と操縦力が強まりなんとか収束して離陸できたから良かったけどねぇ、、、

事の原因はちゃんと走らなかった翼端保持者だけど
事故に発展すれば離脱決心をしなかった機長の責任
グランドループしたら胴体折れちゃうから高い授業料になっちゃいます。

下手すりゃ曳航機も引きずり落として道連れだよ~
※曳航機の離陸中は機体制御にかなりのワークロードを取られているので曳航機側からの離脱は難しいです。

弱い背風での発航も同じ条件になるから翼端はきっちり走らなきゃダメ

全てのグライダーの持つ危険な特性で
・極めて重心に近い位置に主脚があり
・着陸脚にステアリング機構を持たない
・翼が長くヨー軸アームが長い
・翼幅に対して胴体長が短い

首輪+主輪+尾輪の3輪式でも程度の差はあるけどほぼ同じ特性を持つので
空力舵の操縦力が弱くなる離着陸の低速域でのヨー軸偏向に対しての操縦力が弱くリカバリーが困難です
つまりヨー慣性モーメントに対しての初期収束が重要になります

「慣性の暗算(読み)」がハズレると
とっ散らかった時には絶対にリカバリー出来ないから危ないって事です。

更にCGフックによる飛行機曳航は
作用点がCGにより近くなるからより不安定
nosehook
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翼と胴体のアームに対してCGと作用点になるCGフックのアームがあまりにも短くヨー軸の自己復元力がさらに不足するし
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ピッチ軸への作用は
CGに対して作用点が下になるのでピッチUpモーメントが常時発生してエレベーターによる機首下げ操縦力で釣り合わせている状態なので
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曳航離陸時での乱流やオーバーコントロールにより曳航索張力が変化すると
適切な操作による抑えが出来ないとピッチ軸動揺によりポーポイスに発展します。

飛行機曳航するならやはり「ノーズフック」が理にかなっていて
images

・CGと作用点のアームが一番長いので復元力が大きい
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・CGと作用点の垂直方向の差が少ないので曳航索張力変化によるピッチモーメントが小さい
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基本的に「支払う対価が極めて大きい危ない遊び」なんだから
リスクは最小限に抑えなきゃ

機体の修理改造で買える安全は
買わなきゃ大損です♪

色々 偉そうに書いたけど
「事故は確率との追いかけっこ」なんだよね

航空機エンジンが飛行中に壊れる確率は2万分の1だか20万分の1って言われてるし
航空機の事故率は車より遥かに低いって言われるけど

宝くじは毎回高額当選者が居るし
スロットマシーンでジャックポット当ててぶっ倒れるおばあちゃんの動画だって良く見る
どんなに低い確率でも「当たり」を引けちゃうんですよ、、、
「確率」だけを見れば次に飛んだら墜ちたって不思議じゃないんです

事故防止って
発生した事象を観察し発生原因と回避方法を考えて
・「当たり」を引く確率を可能な限り下げる事
・「当たり」を避けるための選択肢を多く持つ事
だと考えます。


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「読み物程度の航空工学㉑【グライダーの地上滑走安定性】」への3件のフィードバック

  1. はじめまして。
    グライダーが着陸しているところは何度も見ていますが、滑走路から着陸して出る時も翼端をつけないようにして出ていくのですかね。その場合、どのような操作をしているのか気になりす。

    1. ドレミファラデーさん
      コメントありがとうございます
      グライダーは翼が長いのでロール軸の操縦力を司るエルロンの操縦力は人が小走りする程度の対気速度(数m/s)があればコントロール可能です。

      基本的に離陸時は翼端を支えながら走ってもらって
      対気速度が増してコントロール可能になれば
      操縦幹の左右でエルロンをコントロールしてバランスを取りながら離陸します

      着陸の際は
      接地後の地上滑走もエルロンで水平を維持するようにコントロールしながら減速して
      停止直前~停止あたりでそっと風上側の翼を下ろして停止します。

      文章にするとちょっと難しく感じますが
      慣れてしまえば無意識に水平姿勢を維持出来ちゃいますよ~

      1. 返信遅くなり申し訳ありません。
        基本は水平姿勢の維持ですか。ご教示ありがとうございました。

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