E36 325I CABRIOLET 「質感の向上」を考える⑤

先日作ったE36 M3&Cabriolet用のフロントボディダンパー

一通りの天候と体調
1日300kmのツーリングからワインディングまで走らせてみて
ぼちぼち客観視出来るようになったのでインプレッション

※買ってきた新しい部品はどうしても評価バイアスが掛かって良い方向に寄る(思い込む)から
付けてチョイ乗りだけで評価しちゃダメなんですよね
もちろん自分で作った部品だと「思い入れ係数」が掛かるからなおさら評価が甘くなる(笑)

最初にボディダンパーが作用している要素を見てみると
車のサスペンションに関する振動と周波数をグラフで見るとこんな感じ
sketch-1598143357622
縦軸が振動エネルギーで、横軸が周波数

黒の破線の最初の山がバネ上固有振動数で
次の山がバネ下固有振動数
バネ上固有振動数で1.3Hz付近だから一般の乗用車

ピークが出ている2つの山は固有振動数で共振して振動エネルギーが発散している状態
この共振を抑え込むのがダンパーの役割で
減衰力が高いほど振動エネルギーを熱に変換するので赤ラインのようにピークの高さが低くなってきて
青ラインがスプリングに対してダンパーの減衰が適切に作用した状態

このほかに、
僕が気付いただけでも車両全体で見ると更に4つの山があって
・タイヤの縦バネによる固有振動数
・ホイールの縦バネによる固有振動数
・ボディのバネによる固有振動数
・シートスプリングによる固有振動数

タイヤからドライバー&パッセンジャーまでの入力順に並べて減衰要素を見ると
・タイヤの縦バネ&ゴムのヒステリシス減衰
・ホイールの縦バネ(もちろんメチャクチャ硬い)
・サスペンションの縦バネ&ダンパーによる減衰
・ボディの縦バネ(これもかなり硬い)
・シートの縦バネ&ウレタンスポンジによる減衰

この中で「何らかの減衰力」が作用していないのがホイールとボディで
このボディのバネ要素に減衰力を掛けているのが
「ボディダンパー」

最初に見た時はヤマハ技術者の着眼点と商品化まで持って行った企画力に驚きましたね~ 
それまでの補強で固める一方(固有振動数を高めていくだけ)の世界でしたから

ホイールに対しては回転体のホイールに減衰力を作用させるのは難しいので
現状ではホイール剛性で調整する領域ですね

ボディダンパーの作用を確認したところで、、、
今回の325i Cablioretに取り付けたフロントボディダンパーのインプレッション
DSC_8127

良くなった点は
<全般>
・狙い通りフロントの入力点のストラットタワーをダンパーで繋いだので振動減衰効果は抜群
車の年式が軽く10年は若くなります。
逆に考えると新しい設計はダンパーで抑え込まなくてもフレーム設計と音振設計でまとめてるのが凄いですね、、、
屋根無し一族の悪癖「スカットルシェイク」やステアリングに伝わるプルプル感は半減

・NHVはドライバー&パッセンジャーの受ける車格やキャラクターが変わるくらい改善されます。
E36がE46やZ4みたいな感覚になりますし
E36 3シリーズと E39 5シリーズの間くらいの質感になりますね
エンジンコンパートメントから伝わってくるエンジンの音質、音量、振動が変わって
「静かで滑らか 」
27年前の古い車なのに上質感でちゃいます。
ドアの閉まり音まで変化して、余計なビビり音がきえで「ガシっ!」って音質に

正直、ここまで変化すると思わなかった。
3シリーズに組んでコレだから
ぺらっぺらの軽自動車に組んだら激変に爆笑するだろうなぁ(笑)

<ツーリング>
・余計な振動(雑味)が減ってスッキリとしたクリアな乗り味
超高レートのスプリングであるボディに減衰力を作用させていることでタイヤの面圧変化が少なくなり直進性が向上
タイヤの接地面がペタッと路面に密着しているのが伝わる
「アライメントで作る直進性」とは明らかに違う感触
コレは疲労度が少ないです。

<ワインディングを走らせると>
・タイヤの接地性が良いのでブレーキング~一次旋回の正確性が大きく向上

今までは路面不正でフロントがフルフル震えていてイメージしたラインを筆でなぞるみたいな曖昧な感触だったけど
イメージしたラインを鉛筆でなぞる様にピタリと車が再現するBMWらしい動き
コレが好きで苦労してでもBMW乗ってるんだよね!
街の交差点を20~30km/hで曲がるだけでも運転が面白い♪

・フロントタイヤにどっかりと荷重を預けた状態で車が跳ねる動きが消えた
両端をボールジョイント支持にしたことで
ストラットタワーバーがトーションスプリングとして作用してボディのスプリングレートが高くなる「突っ張り感」は皆無
今まで「バンプラバーに当たって跳ね返されている」と思っていたけど、「ボディの撓みの戻りによる跳ねだった」って事に気が付いた

「ボディが跳ねない」ってかなり重要です。

次に悪い部分は、、、
<全般>
・「バンプラバーを深く使う路面不正」を越えた時には流石にスカットルシェイクは隠せない
ボディダンパー無しの「ダダンッ!」って震える感触じゃなくて
「ガシっ!」って抑え付けられた感触に変化

ちょっと逃げが無くて車が可哀想かなぁ
まぁ、、、
コレはボディとボディダンパーの減衰力ってよりサスペンションストローク量の問題が大きいかな

<ツーリング>
・ボディのフロント周りの撓りをダンパーで抑え込んでいる感触が強くてステアリングセンターの直進から拳半分くらいの微小舵角のゲインが高すぎる
正確性が向上しているので今までボディの撓りで消えていた部分が表面化した形
車の動きの曖昧さが消えているので、「何時も車に正確な運転を要求される」感覚

ボディダンパーの減衰力が高過ぎてタワーバーみたいな効果が出ています
体調が良く体力がある元気な時はビシッとしていて良いけど、疲れてくるとだんだん効いてくる
マジメすぎるのもチョット疲れるよねぇ、、、

<ワインディング>
・一次旋回の後の「追い舵」が効きすぎる
正確性、接地性が良くなったので、より大舵角までステアリング操作についてきて
雑な運転をかなり許容してしまう
アンダーが弱くなったとも言えるんだけど、
「ミスはミスとして伝えてくる車のほうが正しい」と考えるので、
これはチョット違うと思う

・フロントタイヤからのインフォメーションが僅かに薄くなる
フロントタイヤを追い込むように使って限界付近で
タイヤが捩れて滑り始める時の
「ズズズズ、、、、」って微振動も減衰してしまうので注意が必要

インフォメーションは残っているので知覚することは出来るから「馴れ」で解決できるレベルなんだけど
「どこまでもステアリングについてくる」って甘えていると、
小さな声で「そろそろダメなんですけど」って囁いてフロントが逃げ始める

一番の欠点は、、、、
フロントだけ取り付けるとフロントとリアで余りにも特性が変わっちゃう
今回はフロントに取り付けたのでフロントの「ボディの跳ね」が抑制されて接地性が良くなってオーバーステア方向に変化しているので
バランスを取るためにもリアにも必要、、、
ってか欲しくなる(笑)
フロント&リアのセット販売なのは理解できますね~

って事で、、、
良い部分も悪い部分も一通り見たので今回の仕様を「A仕様」として
減衰力の違う仕様を「B仕様」としてテスト続行しています。
DSC_8386
外見からじゃ見分けつかないなぁ(笑)

とりあえずフロントはA仕様、B仕様の2種類作って傾向が見えてきたので
リアにも取り付けてから、フロントの最終仕様を決める事にします。

この部品面白いです♪

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