読み物程度の航空工学⑩ 「 旋回のお作法」

立派な飛行機が出来上がって、上昇と降下、水平飛行は可能になりましたよね
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でも、旋回しなきゃ自由に飛べるとは言えないし、そもそも自分の飛行場に帰れない!!

最近じゃ鳥人間コンテストだって旋回して帰って来る時代ですからねぇ、、、

じゃ、旋回してみましょ
飛行機の旋回って車やバイクとは根本から違います。

車はタイヤと路面の摩擦力とスリップアングルにより旋回して、
スリップアングルの図

バイクはリアタイヤのキャンバースラストで旋回します。
(だからバイクはリアタイヤが主輪でフロントは従輪)
セルフステア

飛行機の旋回は機体をバンクさせる事により揚力を傾けて、求心力を発生させて旋回します。
Figure 3-20 Forces during normal coordinated turn

のんびり水平飛行している飛行機を後ろから見た図です。
水平飛行中

水平直線飛行をしている飛行機のエルロン(補助翼)を使って左右の揚力バランスを崩してバンクさせます。
ロールIN

バンクが確立したらエルロンを中立(僅かにカウンター)にしてロールを止めます。
バンク確立

飛行機が傾くと主翼により生じた揚力の軸が傾きます。
揚力が斜めになると垂直成分に加えて水平成分が生まれます。この水平成分が飛行機を旋回させる求心力になります
飛行機が傾いても重力は同じなので、このままでは[重力>揚力]なので降下しちゃいます。
あくまでも水平旋回なのでココで僅かに操縦桿を引き機首を上げて主翼の迎え角を増やし
揚力を多くして[重力=揚力]に合わせます。

 なんとか水平を維持して旋回できるようになりましたが、求心力をセットになるのが遠心力
遠心力が機体に作用して、重力との合力で見かけ上の重力が増えます。
これが飛行機に旋回中に掛かるGです。

もちろんバンクが大きくなればなるほど求心力が大きくなり必要な揚力が大きくなり、同じだけ遠心力も増えるので見かけ上の重力も大きくなります。
水平旋回
バンク60°で2G(重力の2倍)の荷重になります。

さて、、、バンクを深くすると、必要な揚力も大きくなるって関係が見えてきました。
つまり、「旋回すると水平直線飛行より大きな揚力=大きな迎え角」が必要です。
 
 大きな迎え角は大きな揚力を生みますが、もちろん抗力(空気抵抗)も大きくなりエネルギーが失われます。
浅いバンクのタラタラした旋回だと5~10km/hほどの気にならない程度の減速で旋回できますが
(もちろん水平飛行に戻れば迎え角を戻して抗力(空気抵抗)も減るので自然と再加速)

もちろんそのままだと増えた抗力(空気抵抗)により速度が減少してしまうので
抗力に対抗するためにエンジンパワーを増やします。
これで抗力(空気抵抗)と推力(エンジンパワー)が釣り合うので等速水平旋回が可能になります。

じゃあ、、、もっとバンクしたらどうなるか?って もちろんさらにGが増えて、必要な推力も大きくなります。

SM趣味のパイロットが高G喰らってハァハァ喜びながらバンクを深めてパワーを掛けまくり、
ついにはフルパワーでギリギリ水平旋回できるところでバランスさせました
ここがこの飛行機の限界性能、

現代戦闘機は4G以上の連続旋回が可能です。
これは燃料が切れるまでずーっと4Gでグルグル水平旋回を続けることが出来ます。

ちょっと脱線気味ですが、飛行機の旋回ってイメージ出来ましたでしょうか?

ポイントは、、、
飛行機はバンクさせることによる揚力の水平分力を求心力に使って旋回します
旋回すると遠心力と重力の合力で見かけ上の重力Gが増え、水平旋回を維持するには迎え角を不足した揚力を補わなければならない
迎え角を増やして揚力を増やすと、抗力(空気抵抗)も増えるのでエンジンパワーを増やしてバランスさせる

今回は省きましたが、エルロン操作による揚力左右不均衡から生じる抗力左右不均衡でヨーが発生するので
ラダーによるヨーカウンターが必要です

こんなお作法で飛行機は旋回しています~


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