前回の計算で「1G旋回でのロール軸荷重変動」を求めたので
バウンス系の計算で求められたホイールレートにロール荷重変動を織り込んで姿勢変化量を見て
スタビライザーの設定を考えます
必要な諸元は
・ロール方向荷重変動
・ホイールレート
なので
ロール方向荷重変動は前回の計算値で
フロント 129kg
リア 67kg
ホイールレートはノーマルM3の推定値で
フロント 1.64kgfmm (1.04 Hz)
※スプリングレート 1.86kgfmm ACF 0.88
リア 2.54kgfmm (1.33Hz)
※スプリングレート 5.94kgfmm レバー比1.53
単純比較計算ですが
ロール変動成分をホイールレートで割って
求められた荷重変動量をホイールレートで割れば
1g旋回時のストローク量が出るので
フロント
Out側ロール変動荷重+129kgf ÷ フロント 1.64kgfmm
Out側ロールストローク +78.66㎜
In側ロール変動荷重ー129kgf ÷ フロント 1.64kgfmm
In側ロールストローク -78.66㎜
リア
Out側ロール変動荷重+67kgf ÷ リアホイールレート 2.54kgfmm
Out側ロールストローク +26.38㎜
Out側ロール変動荷重-67kgf ÷ リアホイールレート 2.54kgfmm
Out側ロールストローク -26.38㎜
以上から
バウンス系のスプリングだけで走らせると
瞬間ロールセンターが高くロール荷重変動が少なく
且つホイールレートの高いリアに対して
瞬間ロールセンターが低くくロール荷重変動が大きく且つホイールレートが低いフロントは
ロールしまくっちゃう事になりますよね
バウンス系のホイールレート設定は基本的に
「定員乗車でトランクに既定の重量を乗せた状況」だったり「最大加速時の荷重変動」を考えてリアの固有振動数を高く(硬く)設定されるので
ロール剛性の変更を理由に簡単に変更出来ない、
E36のジオメトリでロール剛性でバランスさせたら、前後固有振動数バランスがF>Rになって凄い事になっちゃいます
フロントを軸にピッチングで揺さぶられる車って結構しんどいと思う
って事で、
まずは単純にフロントスラビライザーを追加して前後ロール量を揃えてあげればバランスが取れる事になります
フロント
Out側ロール変動荷重+129kgf ÷ フロントホイールレート 1.65kgfmm
Out側ロールストローク +78.66㎜
リア
Out側ロール変動荷重+67kgf ÷ リアホイールレート 2.54kgfmm
Out側ロールストローク +26.38㎜
※In側も同じ計算で+-がひっくり返るだけなので省略
過大なフロントロールをリアと揃えるには
フロントOut側ロール変動荷重+129kgfをリアOut側ロールストローク 26.38mmで割ってやればホイールレートが出るので
フロントOut側ロール変動荷重:129kgf/ リアOut側ロールストローク:26.38㎜
ホイールレート≒ 4.89kgfmm
求められたホイールレート 4.89kgfmmから
バウンス系のホイールレート 1.64kgfmmを引けば スタビライザーホイールレートになるので
ホイールレート:4.89kgfmm – フロントホイールレート:1.64kgfmm
スタビライザーホイールレート ≒3.25kgfmm
フロントにホイールレート3.25kgfmmのスタビライザーを組めば前後ロール量が等しくなるので、
定常円旋回中のステアバランスはニュートラルって事になります
(前後アライメントとサスペンションジオメトリでのキャンバー&トゥ変化の影響はもちろん残りますが)
ここまでの考察で基本的なスタビライザーの使い方が見えてきました
バウンス系でフロントのバネ上固有振動が低くなるのが基本設定なので
ロール剛性の調整はフロントスタビライザーが主役になるってコトです
だから、リアスラビライザーが省略されても基本的には成立するんですね~
市販車両は
基本となる標準車は
乗り心地と基本操縦特性を弱アンダーステアに設定したバウンス&ロール系のホイールレート&スタビライザーホイールレート設定で設計され
標準車に対して旋回性能を引き上げたスポーツグレードはリアスタビライザーを追加してフロント&リアのロール剛性バランスを維持した状態でさらにロール剛性を高めて
荷重変動を減らして4輪の平均タイヤグリップを引き上げているって事ですね
エリーゼやNDロードスターの標準車にリアスタビライザーが設定されていないのは、
サスペンションジオメトリーで作られるロールモーメントが標準車として充分と判断されて
潔く取っ払って軽量化&原価低減を選んだんでしょうね~
つまりリアスタビライザーは贅沢品です(笑)
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