先日、グライダー曳航で飛びましたが
天気がどうにもイマイチ
西日本から東日本に延びた前線に南から湿った空気が流れ込み活発化
この影響で九州から関東にかけて広い範囲で雨。日本海側は激しい雷雨が予想されます。
寒冷前線の南に位置する関東は曇りですが、今後、低気圧の東進と前線通過により夕方から雨が予想されます。
朝一の空はこんな感じ
曇りベースですがフライトは可能、
ただし天気の急変には要注意です。
雲はだいたい多層になって発生します
この日は
一層目がSCT(雲量3/8~4/8)の雲が1500ftくらい
二層目もSCT(雲量3/8~4/8)の雲が8000ftって空はでした。
VFR(有視界飛行方式)の飛行機にとって
SCT(雲量3/8~4/8)ってナメてかかると結構危ないんですよね、、、
METER&TAFは雲量、雲底高度、雲形は分かりますが雲高(雲の厚さ)はわからない
同じSCTでも飛行高度と雲高(雲の厚さ)しだいでかなり感じるプレッシャーは異なります
写真はほぼ同じ時間帯の空で2層の雲
地上から見ると ソコソコ雲量はあるけど青空も見えるしそんなに悪く無い感じで
視程10km以上 SCT020cu SCT080stってくらいかな
この空を3000ftから降下した時の見え方の変化です。
雲の上なら問題ありませんが、
着陸のために高度を下げていきます。
雲の高度に近くなるとかなり飛行可能範囲が狭まります。
同高度だと雲の谷間しか通れません
実際に視程は10km以上をありますが 雲に阻まれて視界はかなり白くなり
慣れないとバーディゴ(空間識失調)の危険性も出てきます。
・バーディゴ(空間識失調)とは
人間の水平感覚は「視界80% 三半規管20%」ですので視界を奪われた状態でg変化が起こると、上下水平感覚に錯覚が起こり飛行姿勢が分からなくなり機体のコントロールが出来なくなります。
特に雲高(雲の厚さ)が高い条件になると雲の壁が出来るので上に逃げられなくなるので
左右に旋回して雲の切れ間を探したり、
スパイラル(螺旋降下)で雲の下に逃げる事を余儀なくされます。
ここまで追い込まれると
VMC(有視界気象条件)の維持もかなりキツくなってきます。
雲に囲まれて逃げる時に「解っていそうで知らないのが自分の機体の旋回半径」
旋回して逃げるつもりが旋回イメージより実際の旋回半径は大きい事が多いので不意に雲に入ってしまう事もあります、
「そんなにイメージと実際の動きに差があるの?」って思いますが
航空機って普段は対象物から遠く離れて飛んでいるのでパイロットの「旋回半径の距離感覚」は薄いです。
ハスキーみたいな50~100mph(80~160km/h)程度の低速機なら旋回半径が小さいのでクルクル旋回して逃げれますが、
高性能機になると旋回半径も大きく 行き足も速いので雲を避ける為にはより大きな穴が必要になります。
もちろん雲は生きているから状況はどんどん変化するので「気が付けば雲に取り囲まれて出口無し」の最悪の状況も十分あり得ます。
さらに低出力の小型機だと余剰推力が足りなくて雲の壁が飛び越せない状況になると
僅かに見える地表をたよりに旋回降下を選んで、不意に雲に入り視界が奪われた状態のまま地表(水面)や山に激突の可能性が高まります。
こんな状況設定から「行動の分岐」を考えると
VFR(有視界飛行方式)のパイロットがVMC(有視界気象条件)を維持出来なくて事故になるのは雲高に対する認識も原因の一つじゃないかな?
どんなに経験があっても姿勢指示器(人工水平儀)が無い機体で雲に入り視界を奪われてしまえば簡単にバーディゴ(空間識失調)に陥ります。
指示指示器(人工水平儀)があってもIFR(計器飛行方式)の経験が無ければまともに飛べません
雲量、雲底高度、雲形(雲高)を調べて三次元でイメージして「飛べる?」「飛べない?」を判断することが大切です。
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あっちの日記に書いてますが、2年前の9月、A320搭乗中に一瞬vertigoに落ちました。パッセンジャーなのに。(笑)
大分疲れが溜まってたせいですね。
アレが自分の操縦中になったら、マジ怖いですね。
VFRなら、(雲の上に)上がらない、(そもそも)飛ばないというマネジメントも重要になるんでせうか・・・。
視界を奪われた状態だと誰でも簡単にバーディゴになりますよ~
静かにゆっくりと綺麗にバランスさせて縦gしか掛からないようにバンクさせて、
一気に水平までバンクを戻すと
逆にバンクしている錯覚に陥ります。
視界が無い状態で飛ぶIFR(計器飛行方式)のトレーニングはフードを被って外が見えないようにして計器だけで飛びます。
フードが外されるのは着陸直前のDH(決心高度)です。
計器進入のルールでDHで滑走路が視認出来ない場合は着陸復航ですので、最終判断ポイントになります
VFRのフライトで一番大切なのは気象判断です、
どんなに高性能機に乗ってもVFRパイロットは視界を奪われると事故に至ります。
悪天候時の「飛ぶor飛ばない」の判断は生死を分ける事になります。
雲が多い条件で「雲の上に出る」or「雲の下を這う」は目的地の天候とエンルートの天候を調べながら判断しますが、
雲の上に出るリスクは
雲の穴が見つけられなくなったら雲の上に閉じ込められちゃいますし
雲の下を這うリスクは
雲の壁が出来ると行き場を失って、下手に雲に入ると山に激突の可能性が高まります
航空機の操縦自体は難しくはありません
一番難しいのは
「条件判断からの行動の決断」です