前回、停止状態からバネ上固有振動数=共振までの比較的遅い入力による動きをまとめました
車両の使用用途によりバネ上固有振動数を高める(スプリングを硬くする)と共振点が高速側に移動してバネ上が揺さぶられる速度域が広がるって事です。
今回はバネ上固有振動数=共振周波数以上の入力を考えます。
振動伝達率のグラフを見ると、周波数の比=1.0(固有振動数)で共振を起こし無限大になり
固有振動数の√2の入力から縦軸の振動伝達率が1.0を下回り、バネ上に振動を伝えにくくなります。
固有振動数の3倍程度の入力になると振動絶縁効果が高く、
防振マウントはこの周波数領域で物を支持することで振動を遮断しています
つまり、この固有振動数x√2より速い周波数の路面からの入力は
周波数が高い(速い入力)ほどバネ上(車体)には伝わらずバネ下のみが動きます。
ラリー車などの映像を見るとボディはバネ上固有振動数で上下しつつ、
バネ下は激しく動いて路面追従しているのを見ることができます。
これは水風船ヨーヨーが跳ねるリズムより激しく手を上下させているのと同じ状態
固有振動数(共振周波数)以上の入力では激しく手を上下させても
手の動きにヨーヨーは追従せず動かない状態です。
バネ上固有振動数以上の入力はバネ下が自由運動して路面追従するので、
サスペンションストローク量より多い入力はバンプラバーに当たります
つまり「完全にストローク量の勝負」になります。
参考になるのはBAJA1000の映像です。
バネ上はゆっくりとした周期で動き
バネ下は速い周波数で自由運動して路面を捉えています。
悪路で高速走行を行うために可能な限りストロークを確保したサスペンションです。
走行中に路面段差を踏むと重たくて動きにくいバネ上(ボディ)が
上に逃げる前に軽くて動きの速いバネ下だけが動いちゃうので、
段差分スッパリとストロークするってイメージです。
2.5Hzのサスペンションだと3.5Hz(2.5Hz x√2)より速い入力はボディへの衝撃伝達率が下がり、
固有振動数の3倍以上の速い入力(2.5Hzx3=7.5Hz以上)ほどバネ下だけで処理されます
もちろんこの領域はダンパーの減衰力が低い方がバネ下の自由運動が阻害されないので
ボディがフラットに保たれます。
この領域のダンパーの役割は必要以上に減衰力を立ち上げずに足を動かすことが重要になります。
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「それならダンパーの減衰力高めれば早いストロークを止められるだろ!!」って?
ダンパーの減衰力を高めるって事はサスペンションを固めて動かなくするって事ですから、、、
限度ってものがあります。
高速側減衰力を高めていくと最終的にはスティックして「単なる油圧シリンダー」になっちゃいますので
「金属とバンプラバーを介して力が伝わる」のと「油圧を介して力が伝わる」事は
衝撃が入ることには変わりないでしょ、、、
油は非圧縮性だからバンプラバーにブチ当てるほうがマシです
当初の目的は乗り心地を良くしたいんだったよね?(笑)
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このように固有振動数以上のバネ下の自由運動領域ではストローク量があるほど
減衰力を低く抑えることができるので
路面からの入力を吸収することができます。
(長いストロークを使って入力エネルギーを熱に変換するイメージです)
逆に、
ストロークが短いほど減衰力を高めてストロークにブレーキを掛けないと底付きします。
減衰力を高めれば底付きは防げるけど乗っているドライバーに衝撃が伝わり、
車内でぴょんぴょん跳ね回ります(笑)
そんな車乗りたくないなぁ、、、
以上の理由から
「ラリー車(特に高速ラリーレイド車両)のサスペンションストロークは長い」って事を再確認し
「底付きを防ぐにはサスペンションストロークを確保するしか方法が無い」って唯一の対策方法を知り
表題の「スプリングレートを高めても底付きは防げない」って結論にたどり着きました。
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