スプリングレートを上げても底突きは防げない③ バネ上固有振動数以下の入力

前回で固有振動数=共振ってイメージ出来ましたか?
ばね上固有振動数(=共振周波数)で入力されるとばね上固有振動数で激しいバウンドが起きるこの運動のイメージは「夜店の水風船ヨーヨー」ってお話でした。

今回は固有振動数以下の動きを見てみます。
ばね上固有振動数以下のゆっくりした入力に対してどのようにサスペンションが動くか

周波数と振動伝達率
ばね上固有振動数が2.0Hzに設定されたサスペンションは
1秒間にストロークが2回以下の動きはばね上に動きが伝わります。
なんだか変な感じがするかもしれませんが。
ゆっくりと車体が持ち上げられる動きなので,そのままボディも上ります。
スロープをゆっくり上って下るイメージです、

これは水風船ヨーヨーをゆっくり上下させているのと同じ状態
固有振動数(共振周波数)以下の入力では手の動きに合わせて単純にヨーヨーが追従しているだけ
振動伝達のグラフで伝達率1.0以上の領域です
振動伝達2
入力される周波数(ストロークスピード)が高まってくると固有振動数に向けて振動伝達が1.0以上に増えていくので
入力がすべてばね上に伝わります。
入力される周波数(ストロークスピード)が高まってくると固有振動数に達すると共振状態になり「鋭い突き上げ」になります。
この共振に至る領域は、バネ下からの入力に重くて遅いバネ上が追従できずに、
スプリングが縮む分だけ「遅れ」て追従するので、スプリングの縮みが伸びることで入力が増幅されます。
極めて遅い動き(低い周波数)から共振寸前までは「遅れによる縮み量」が増えていくイメージです。

停止状態でサスペンションに入力がない状態の振動伝達率1.0の状態から
バネ上固有振動数での入力による共振状態で無限大運動を超えて
共振周波数の√2倍までは路面からの入力にバネ上(ボディ)が揺さぶられる動きになります

よく高性能車のインプレッションで言われる
「低速では揺さぶられるような感覚を受けるが、速度が上がるに従いフラットな乗り心地に変化する」
聴いたこと(読んだこと)ありませんか?
この「低速で揺さぶられるような感覚」って部分が固有振動数(共振周波数)以下の動きです。
街乗りの乗用車に比べて硬い(固有振動数の高い)サスペンションを装備しているので、
遅いストロークではサスペンションが動かず、路面のうねりをばね上に伝えている状態です

逆に、乗り心地の良い高級車や、エアサスペンションのバスなどは
街乗りの乗用車に比べて柔らかい(固有振動数の低い)サスペンションを装備しているので、
遅いストロークでもサスペンションが動き、路面のうねりをばね上に伝えにくくなります。

もちろんサスペンションを変更してノーマルよりはるかに硬いスプリングに変更すれば
バネ上固有振動数=共振周波数が高くなるので
「低速での路面のうねりを伝えて揺さぶられる」の速度がより高速側に広がっていきます。

バネ上固有振動数はノーマルサスペンションでは1.5Hz,サーキット寄りの車高調で2.5Hzまでの領域で、
固有振動数の√2倍以上になると次第にバネ上に動きが伝わりにくくなります。

スプリングレートによる振動伝達の変化はせいぜい「固有振動数 x√2Hz」までの比較的遅いストロークスピード域で
それよりも速い入力である高速で段差を乗り越える等の周波数の高い領域には関与していないって事ですね

次はバネ上固有振動数以上の入力を考えます

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