R33 GT-R「大先輩号」の仕様変更を考える⑰

前回、車高に伴うスタビライザーレートの変化傾向を掴んだので
スタビライザーの作用をバネ上固有振動数に織り込んで、スタビライザーの役割と効果を見てみます。

最初にスタビライザー無しでの前後固有振動数を確認
最初のスプリングレート設定で検証した値と同じです。
理由は
スタビライザーは「左右サスペンションのストローク差に対して作用するトーションバースプリング」ですのでピッチには作用しないから
つまり「ピッチ軸」での前後固有振動数バランスになります

ピッチング軸に関しては、
ノーマル基準車を軸にして
HKS等のチューナー系はより前後固有振動数が接近していて運動性重視で
メーカー系の高性能仕様は、前後固有振動数が離れていて安定性重視
この指標は加減速時の姿勢の目安として使っています

数値を並べても関係がイメージしにくいので、
いきなりグラフを表記
整理しましたのでちょっとスッキリ♪
R33 GT-Rピッチ軸 固有振動数

次に、「ロール軸」に関して見ていくと
バネ上固有振動数の計算式のメインスプリングのホイールレートにスタビライザーホイールレートを加えて
定常円旋回時の前後固有振動数バランスを求める

設定条件は
・ノーマル&V-specは
ノーマルスタビライザー
・HKSは
HKSでのスタブライザー設定が無いのでノーマルスタビライザー
・NISMO S-Tuneと400Rは
NISMOの強化スタビライザーが設定されているので NISMOスタビライザー

既存の計算式にスタビライザーホイールレートを追加するだけだから 計算はチョイチョイ
計算結果をグラフに乗せると、、、
こんな感じ
R33 GT-R ロール軸固有振動数

標準車に対しての関係は変わらないけど
フロントスタビライザーがより強化されたNISMO系は、ロール軸で見た前後固有振動数の差が小さくなっています
定常円旋回中のアンダーステアが減少して、ニュートラルステアに寄せたバランスに変化しますねぇ

現状の「大先輩号」はフロント7kgf/mm リア8kgf/mmのメインスプリングにノーマルスタビライザーなので
ロール軸の前後固有振動数バランスは一番右端に位置するので
定常円旋回でのバランスは一番の安定方向
パーシャルでもパワー掛けていれば簡単にはスピンしない特性がグラフにも現れていますね~

このスプリングとスタビライザー設定だと
スプリングに対してスタビライザーが弱い組み合わせなので
一次旋回での対角ロールが大きくなりリアIn側の荷重抜けが大きくなるので
リアを振り出す要因の一つになっています。

この特性に対する現状での対策は
・リアのツインスプリングの密着荷重を減らしてロール&ピッチ剛性を高める
・減衰力を高めて姿勢変化時間を引き伸ばして擬似的にロール&ピッチ剛性を高める
この2点ですが
減衰力調整に関しては不足しているスタビライザーレートを補完するために減衰力を強めて
「動かない脚」にしているので
トラクション&乗り心地に関しては不利な方向になっています。

この減衰力で姿勢変化を押さえ込むセッティングは
スタビライザーを強化せずにダンパーの過減衰により姿勢変化を押さえ込む事で
バネ上の動きを抑えこむために高めた0.1m/以下の低速域に引き摺られて,
乗り心地に関係する0.3m/s以上の高速域の減衰力も高くなってしまうので
入力周波数が高い(速いストローク)ほど脚が動かなくなり突き上げ感として現れます

コレに対してスタビライザーを強化することで
ダンパー減衰力を過減衰気味にして抑えて込んでいたロールをスタビライザーを強化する事で
過減衰気味のダンパーで作っていたロール剛性をスタビライザーが補完した分だけ減衰力を適正化する事が出来る(減衰を抜ける)ので
「動く脚」になりトラクション&乗り心地が改善できます。
コレが「スタビライザーを強化すると乗り心地が変わらずロールが少なくなる」理由です。

ただし、
スタビライザー強化+適正減衰力の組み合わせも全速度域で乗り心地改善にはならず
スタビライザーを強化した分だけロール軸でのバネ上固有振動数が高くなるので
「バネ上固有振動数x3」の免震領域の周波数が高くなり
同じ路面不正を通過した場合のロール方向での左右への揺さぶりが消える入力周波数が高くなります
簡単に言うとより低速では左右に揺さぶられます。

スタビライザー変更による傾向は
・減速からのアプローチは
ピッチが下がって一時旋回の巻き込みを誘発して
・一次旋回初期は、
強化されたフロントスタビライザーにより対角ロールを抑え込み
・定常円旋回中~二次旋回初期は、
リア側のバネ上固有振動数が高い状態で弱アンダーで安定旋回させて
・二次旋回後半から立ち上がり加速に関しては、
旋回gが弱まるほどスタビライザーからメインスプリングの支配力が強くなって
リアが強い前後固有振動数バランスに変化してアンダーステア傾向が強くなり 巻き込みを抑えて斜め前に車を進める

また、ノーマルスタビライザーより旋回中の前後固有振動数が高くなるのでロール剛性が高くなり
旋回中の姿勢変化(ロール)が少なくなることにより
荷重が抜けるIn側タイヤを有効に使えるので、
旋回中の最低速度が向上します。

NISMoスタビライザーに変更したら
ロール剛性がもちろん高まり旋回ボトムスピードが上がり
V-Specより定常円旋回でのアンダーが少なくなるってイメージですね~

さて、、、
スタビライザー強化の考察がだいぶ進んだので
「大先輩号」のスタビライザー強化を考えると
3通り
① ちょっとセコい純正他車流用
色々調べましたが 純正流用で強化出来るのはフロントのみでしたので
フロントスタビライザーのみ強化で対角ロール対策
これなら新品購入しても2万円以下
中古品なら5000円程度

② 一発でベスト! Nismoスタビライザーフルセット
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間違い無く最良手ですが、
なかなかのお値段でちょっとダメージが大きい

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③ 段階を踏んで楽しむ フロントだけNismoスタビライザー
ちょっとバランスが崩れて「やり過ぎ感」が出るかもしれませんが フロントから強化すれば前後バランスは改善方向なので大丈夫

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フロントを強化して楽しんでから リアを追加すれば前後バランスの変化を体感出来ます。

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オススメは②の一発でNismoフルセットですが
③の段階を踏むのが変化が見えて楽しいと思いますが
約2万円の追加出費は大ダメージ
①の純正流用は一番リーズナブルですが
伸び代が無いから結局Nismoスタビライザーを買い直す未来がミエミエ(笑)

さて、、、大先輩!
Step-2仕様の本命部品のスタビライザー
いかがいたしましょう!?

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「R33 GT-R「大先輩号」の仕様変更を考える⑰」への2件のフィードバック

  1. ロール時の外脚の特性変化はイメージできた一方で、内脚を見るとスタビに引っ張られて伸びストロークが規制され、タイヤの面圧が下がってグリップ低下しそう。 あとはダンパー減衰力を何処に合わせるか?悩みますね。

    お値段がはるので他の劣化修繕の後かなぁ。。。

  2. スタビライザーの内脚側支点はバネ上重量で抑えつけられているイメージです

    なんかしみじみ感薄いんですが
    4輪トータルの荷重変動が少なくなるので
    荷重が抜ける内脚と荷重が掛かる外脚の平均グリップは高くなります~

    http://ornis1975.com/2017/05/13/%E5%A7%BF%E5%8B%A2%E5%A4%89%E5%8C%96%E3%81%A84%E8%BC%AA%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%97-%E3%80%8C%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%89/

    適度なスタビライザー強化をすると
    ダンパー減衰力を締めて突っ張らせて作っていた旋回姿勢をスタビライザーが支えるようになるので

    現状の運動性能を維持したまま
    より低い減衰力にする事ができますよ~
    20段くらいの運動性能を24段とかの動く脚で作れるイメージです♪

    E36 325i Cabrioletの脚が典型的なスタビライザー強化仕様です。
    ふにょふにょのダンパーでも走れちゃうのはスタビライザーで対角ロールを支えているからです~

    Nismoスタビライザーは
    グラフの前後平均バネ上固有振動と前後バネ上固有振動数差の移動方向を見ると
    (黄緑の●→緑の●)
    ガチガチにロールを規制する仕様では無く
    前後バネ上固有振動数(前後ロール剛性バランス)の補正が主目的なので

    ①の他車流用でもS-tuneと400Rの中間仕様でコストパフォーマンスが良いとも言えますね~
    (黄緑の●→紺の●)
    だから余計悩んじゃうんですが(笑)

    消耗部品交換はもちろんお手伝いしますよ
    工賃浮かせて その分だけ車を仕上げましょう!

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