HI3C0503

軽量ホイールのデメリット②

サスペンション独学ノートを編集しているときに
バネ下共振の回ででふと気が付きました、、、

「これって、、、軽量ホイールのデメリットの理由なんじゃない?」

あらためて
タイヤ&ホイールの固有振動数とタイヤの特性を考えてみると

①タイヤ空気圧による縦バネ
タイヤは空気圧により作られる空気バネの作用による固有振動数から
「タイヤ&ホイール固有振動数 x√2」以上の入力は振動伝達率が1.0を下回り、
タイヤのたわみで振動を吸収し始めてホイールに振動を伝えにくくなり
固有振動数の3倍程度の入力になると振動絶縁効果が高くなり
タイヤからホイールへの入力が絶縁される
もちろんタイヤはゴムなので自己ダンピングが働き完全に自由運動にはなりません

②タイヤのサイドウォール特性によるダンピング特性
縦に撓むサイドウォール部分が硬いスポーツタイヤほどタイヤの持つ減衰力が高く
ホイールへの入力が増える(=路面不正を伝える)って事になります。
逆にサイドウォールが柔らかいタイヤほど
タイヤの持つ減衰力が低く 縦バネが自由運動に近づくので静かでしなやかな乗り心地になる

③サイドウォールの高さの影響
サイドウォールの高さは、タイヤのたわみ(変形)量に影響する
サイドウォールが高い(扁平率の数値が大きい)タイヤはたわみ量が多い=ストロークが多いので
同じ段差を乗り越えた場合”当たり”がより柔らかくなる

タイヤの縦ダンピング特性と乗り心地の関係も見えてきましたね

ホイールの軽量化による乗り心地の悪化は
ホイール重量の変化によりタイヤ&ホイールの固有振動数が変化するので
ホイールを軽量化することにより、タイヤ&ホイール固有振動数が高くなる
固有振動数が高くなることにより振動伝達率が1.0を切る周波数帯
が高い方向に推移し振動絶縁効果が発揮される入力周波数も同様に高くなり、
タイヤがホイールに振動を伝える振動伝達周波数帯が広くなってしまう。

つまり、、、「同じ路面でもホイールが軽い方が路面からの入力が増える」って事になります。

前回、計算したバネ下固有振動数の式を使って再計算してみると

タイヤ縦バネ
タイヤ縦バネグラフ
y=-3.24x+407
xに偏平率を入れると縦バネ係数(N/mm)が出てきます

M3ノーマルホイール仕様
タイヤ 12kg
ホイール 9.5kg
アーム&ブレーキ 17.8kg
バネ下重量 39.3kg
タイヤ縦バネ係数 261N/mm

バネ下固有振動数を求めると
f=√(261000Nm ÷ 39.3kg) ÷ (2π)
f=12.97Hz
振動伝達率が1.0以下に下がる周波数は
f=12.97Hzx√2
f=18.34Hz
タイヤホイール固有振動数
グラフに乗せるとこんな感じですね

次にホイールを一気に7kgまで軽量化
M3 TE37仕様
タイヤ 12kg
ホイール 7kg
アーム&ブレーキ 17.8kg
バネ下重量 36,8kg
タイヤ縦バネ係数 261N/mm

バネ下固有振動数を求めると
f=√(261000Nm ÷ 36.8kg) ÷ (2π)
f=13.4Hz
振動伝達率が1.0以下に下がる周波数は
f=13.4Hzx√2
f=18.95Hz

軽量ホイールの影響
グラフで変動推移を見てみるとこんな感じに固有振動数が変化します
0.6Hzほど固有振動数が高くなり、振動伝達周波数帯が広がります。
この計算はインチキープ、タイヤも同じって条件なので
インチアップ&ワイドホイールで引っ張りタイヤ、
さらにサイドウォール剛性の高いスポーツタイヤ
って組み合わせだと、
タイヤの縦バネ係数が高まるので、さらにバネ下固有振動数が高まる事になり
振動伝達周波数帯が広がり乗り心地が悪くなりロードノイズがも増えるって事です。

普通は「インチUPしてスポーツタイヤに変更」って交換パターンなので確実に乗り心地は悪化します。
さらに「せっかくだから軽量ホイールにしてバネ下軽量化で乗り心地良くしよう」なんて宣伝文句に釣られてがんばっちゃうと、
もっと乗り心地悪くなっちゃいますね、、、

「それならタイヤの空気圧を下げて縦バネを弱めればOKだろ!」って
 残念ながらタイヤが性能を発揮できる空気圧は荷重によりある程度は決まっているので、
むやみに空気圧を下げるとタイヤの性能を下げることになります
「走行中にビード落ちしてホイール傷だらけ」とか「走行中にバースト」って事になりかねません
タイヤが性能を発揮するために必要な空気圧指定が
「ロードインデックス」によるタイヤ空気圧指定です。
タイヤ空気圧の重要性
タイヤ空気圧を考える② (軸荷重とスリップアングル)
タイヤ空気圧を考える③ (軽量化及びタイヤサイズ変更)

良くあるパターンが、、、
「走行性能を高めるためにサスペンションを固めて乗り心地が悪くなったから
タイヤ空気圧を低くしてタイヤの性能を下げてでも乗り心地を良くする」、、、
コレって何がしたかったんだっけ?(笑)

さて!
これで、何となく感じていた「軽量ホイールを組みと乗り心地が悪くなる」の理由が少し見えてきました
軽量ホイールで乗り心地が良くなるは一部の領域で
共振状態でのエネルギー量が少ないので、「突き上げ」に関してはダンパーが少しは楽できますが
それ以外の部分では乗り心地が悪化するって事になります。

「感覚的に乗り心地が悪い」って前の記事を書いたのが2013年5月
数値的に理解するまで3年10ヶ月も経ったのか、、、

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「軽量ホイールのデメリット②」への21件のフィードバック

  1. 固有振動の話を読んで、思ったんだけど、ストラットサスの純正スプリングの優位性って、サイドスラストもあるけど、スプリングそのものの、質量の大きさが効いている気がします。
    アウディのA4クワトロのリヤのロアアームには、明らかにバラストと思われる重そうなカバーが付いてました。
    マスダンパー効果って、大きいと思います。

    1. ストラットサスペンションのスプリングの重さは「乗り心地の質」に影響してると思います。
      直巻きスプリングで同一レート&自由長で比較した際にも固有振動数が低い「重いスプリング」の方が「乗り心地の質」が良かったです。

      サスペンションに取り付けられるマスバランスはバネ下の特定周波数を狙った音振対策だと思います。
      一度良く見てみたいです。

      マスバランスで感心したのはBMW Z3のリアバンパー内に15kgのマスバランスが付いています。
      「前後重量バランスの補正に使っている」って良く言われますが
      ゴムブッシュによるフローティングマウントしているのでルーフの無いロードスターボディの振動対策のマスバランスですね

      人間の感覚って鋭く且つテキトーなので
      フロアの「ブルブル振動」をマスバランスで消したり、
      内装の「キシキシカタカタ等の低級音」を消したり、
      「ボディの捻れ点」をドライバーから離す
      だけで「ボディ剛性」を感じます。
      その辺りの感覚チューニングにマスバランスは効いてきますね

      音振設計がイマイチな車のシャシーやマフラーはマスバランスがたくさんついてますよ~

  2. 柔らかくて高扁平のタイヤにするとグニャグニャして、
    酔います。。。
    ちょっと乗り心地いいとは感じません。

    1. 乗り心地は「ホイール重量とタイヤの縦バネ剛性」の関係で作られている領域もあって
      考え無しに軽くしてもダメな部分が出てくるよ、

      ってお話で、そもそも低扁平がダメとは書いてないと思いますが、、、

      「乗り心地」の基準は個人で異なるのでお好みでOKだと思います。

  3. バネ下重量について詳しい考察、感心しました。
    低級音がするオープンカーですが、硬いサスと高めの空気圧でロードノイズが気になっていました。これはコーナリング性能の代償なのでしょうね。

    1. 鉄人ASK21さん
      コメントありがとうございます
      ロードノイズはタイヤの銘柄で大きく変化しますので、タイヤ交換の時にあまり強烈なスポーツタイヤを選ばなければ改善できますよ

      国産スポーツタイヤのフラッグシップモデルはサーキット走行に特化しすぎていて使いにくいので
      欧州メーカーのスポーツタイヤの方がトータルバランスに優れます。

      タイヤ選択とアライメント調整だけでも車は激変しますので
      色々と好みを探して楽しんでください

  4. 返信いただけて嬉しいです。
    車もグライダーもトータルバランスが評価基準になりますね。
    自己紹介です。遠い昔整備士でした。幸か不幸かクレームでロータリーエンジンのオーバーホールに当たった口です。
    S800がサーキットで走っていた頃、草ジムカーナにも出たり、キャロル360をベースにデフロックしてサンドバギーも作りました。好きな車はライトウェイトスポーツ。
    T社のフラッグシップエンジンを作る会社のクラブでソアリングを楽しんでいます。

    1. 趣味の乗り物は
      「性能を引き出しやすい扱いやすさ」
      「最後まで安定に戻ろうとする座りのよさ」
      「機敏過ぎないちょっと重ったるい操縦性」
      のトータルバランスだと思います。
      競技機なら戦闘力があれば多少気難しくてもOKだとは思います(笑)

      最近の車はメーカー設計でカナリの高性能なので、「それ以上」を求めるとメリットよりデメリットが大きく出てくるので手を加えるのは本当に難しいですね、、、
      弄れば弄るほどメーカー設計の正しさを痛感させられます。

      鉄人ASK-21号さんのクラブは静岡県の川の上流で飛んでいるクラブですね♪
      過去C-172(JA3914)で訪れた事があります。

      1. ビンゴです。
        タイラップさんの話は本質をついているので会話が楽しいです。トータルバランスという点でASK21は複座の名機かも?
        昨日、片肺だったTOSTのウインチを修理しました。大径ホイール一体のブレーキドラムを外し、シリンダ交換してワイヤを巻き終了。再来週には体験搭乗会でフル稼動。
        このウインチには古いオールズモビルのV8を搭載していますが数年前に4バレルキャブのバッキンセットと点火系を新しくしてまだまだ現役です。
        米国のストックパーツの豊富な事と、4バレルキャブはロータリーで見た以来なので少々感激。

        1. ASK-21 乗りやすい機体ですよね
          唯一の欠点はスピントレーニングに重心位置調整の専用バラスト(スピンキット)が必要な事ですね~
          気を付けなきゃいけないのは体重の軽い女の子はスピンキット無しでもスピンに入る重心位置になるので
          盲目的に「スピンに入らない」って思い込むと危ないです

          エレベーターの操縦力を意図的に抑えて設計しているのかもしれません
          前にスピンキット無しで「なにがなんでもスピンさせる」って色々試しましたが
          全て自転が始まるとエレベーターフルUpでもピッチが下がり「スパイラル」になってしまいました。

          アメリカ車の自動車エンジン流用のウィンチは長く使えそうですね
          燃費は悪いですが、大排気量NAで回転馬力に頼らない方が安心感あります。
          4バレルキャブは見たことありません~
          バンク間に上向きに乗っかってるんですよね!?
          触ってみたいです♪

  5. 日曜は午前のバッタから一転、午後に久々の雲底1,300m到達しました。最近は温暖化の影響なのか様子が変わってきている気がします。セオリーが崩れている。
    以前、浜松基地祭でT2ブルーインパルスが下向き空中開花の引起こしが出来なかった事について、あの機体性能で判断の遅延は致命的だと仲間は言っていました。
    私もランウェイの反対側から上昇しないのを見ていて、急いで墜落現場も見ました。
    タイラップさんもセーフティファーストでお願いします。

    1. 日曜日に飛んでいたんですね~
      板倉でもコンバージェンスが出て楽しめたようです。

      T-2ブルーインパルスの事故ですね
      ジェットのアクロどころかレシプロアクロ機も体験搭乗だけなので何とも言えませんが
      超音速機を使ったエァショーだと飛行速度が速いのでループ半径(旋回半径)も大きくなるので、僅かな判断遅れでの高度損失で墜落が免れない状況になったんだと思います

      パイロットは脱出して生き残るチャンスを捨てて
      地上被害を抑えるために最後まで飛ばし続けたんですね

      「全ての事故は明日は我が身」
      他人様の上を飛んでいる事を忘れずに、気を付けて運航します

  6. コペンのエンジン警告灯が点灯。走行は4万キロ程。
    デーラーに持込んだ結果、マニホールド側のO2センサ
    がアウトという事でした。
    このセンサとECUで空燃比を調整する大事なパーツ。
    警告灯が点灯する前からこんな現象が出ていました。
    ● アイドリングやエアコン始動時に生ガス臭い。
    ● マフラーカッターにススが多い。
    ● 燃費が急に悪くなった。
    O2センサの寿命は8万キロとかともいいますが、交換
    後の加速は良くアクセル開度も小さくなった気がしま
    す。もう少し走らせてみないと分かりませんが、これ
    で上記の現象が良くなれば修理代も納得。

    1. お久しぶりです!
      最近の車のO2センサーはマニフォールドと床下の2箇所付いていますよね~
      O2センサーは巡航時にA/Fを理論空燃比へ補正するセンサーなので燃費への影響は大きいですね~

      故障した場合はECUがフェールマップでの制御になり「安全サイド」のA/Fが濃い目になりますので
      交換修理でセンサー自体の経年劣化分も取り戻せるので調子は良くなりますね♪

  7. グライダーのプッシュバックで、トラブルがありまし
    た。C国製125ccに換装した3輪バギーで牽引したが
    上手く旋回できない。
    後で見たら後輪の片側のタイヤがリム落ちしていまし
    た。デフレスで低空気圧の乗り物は特に発進時、タイ
    ヤにかかるサイドフォースや回転差を、意識しないと
    上手く回れない気がします。
    ただでさえバイクハンドルにレバースロットルなので
    バイク経験者は乗りにくいのに(^ ^;

    1. ATVは4輪&3輪共にデファレンシャル無しなので低速だと曲がらないですよね~
      基本旋回はリーンインで重心を内側低くしてドリフトですから(笑)
      スノーモービルも近いかな!?

      グライダーの地上牽引にはちょっと使いにくいですよね~

  8. マスクをするだけで息苦しいのにこの生活はいつまで続く
    のでしょうか。
    当方のフライト再開は6月からに決まりましたが、すぐに
    滞空検査整備に突入…
    そちらの様子は如何でしょうか。
    私は昔、作ったオーディオを聴いて過ごしています。
    ブームでしたが貧乏学生時代、最初キットのチューナーを
    組んでヘッドホンで聴いていました。秋葉に行くとやはり
    スピーカーから音を出したくてフルレンジのキットを買い
    、雑誌で一番簡単そうな管球プリメインアンプを部品買い
    で半田付け。ノイズの大きいアンプの完成??
    後に分かったのは配線図がミスプリントでした。
    今はロシア製の球ですがクリアなサウンドで鳴っています。

  9. ご無沙汰しております、
    なんだかんだで2ヶ月以上の地上生活ですね
    こちらはまだ運航再開の知らせは届いていません

    在宅勤務になったので、毎朝0600に起床して毎朝3時間を趣味の時間として楽しんでます♪
    ほとんどは車の修理してますが、3時間ってけっこう区切りが良くて段取りしやすいです。

    オーディオ関係はいつか真空菅アンプを組んでみたいのですが、
    さすがにこれ以上趣味の世界を広げると時間も予算も破綻しちゃいますので
    頂きモノの古いDENONを鳴らして楽しんでます。

    地上の趣味の生活も楽しいですが チト長いですね
    全面運航開始が待ち遠しいです、、、

  10. お久しぶりです。
    昨2/14日は強風などで1ヶ月半ぶりのフライトでしたが、春先の強いサー
    マルにhit.雲底は1,400mでしたが久々に楽しめました。新入部員も初めて
    1時間超えのフライトができたとの事。
    話は変わりますが動画を見ると巣ごもりのせいかDIYが盛んな気がします。
    電気ドリルをベースに木工細工でボール盤や旋盤の製作なども…
    私は実家が鉄工所だったので金属加工の方が生に合っています。
    電気は苦手分野で通信教育や最後の仕事にと制御盤の組立てを覚えました。
    その職場で戴いた配線の圧着工具を使って手持ちの各種の電源やタイマなど
    をまとめてオリジナルの制御盤を筐体から作り始めました。プロセスを楽し
    むという事で、金属加工は疲れるのですぐ止めます。飽きてもすぐ止めます。

    1. ご無沙汰しております!
      急に暖かくなって2月なのに春の空でしたね~
      サーマルで1400m昇ればバッチリ楽しめちゃいます

      金属加工は切る削るとに加えて溶接が出来るようになると一気に世界が広がってモノ創りが楽しくなりますね!
      100V半自動溶接機を手に入れてから一気に楽しくなりました

      僕も目に見えない電気は苦手です~
      故障部品の現物修理をしながら少しずつ経験値を増やしています

      モノ創りも修理も製作プロセスや原因調査が楽しめるようになると「視野」が広がるので手探りで悩みながら進めています~

  11. 半自動は治具の修正に使った位ですが使い易いですね。
    実家は200Vのアークとガス切断でした。小学時代はその
    アセチレンガスの発生もカーバイドからでした。
    今日のレーザーやプラズマとは隔世の感です。
    最初に機械設計に就いたのはガス自動溶断機で販売商社が
    今の鳥人間のメインスポンサーでした。
    Y社ではTIGの自動機があって条件に苦戦した思いが…

    溶接の話はこれ位にして車の話ですが、高校時代に鈴鹿へ
    YDS1で行った際、インパネをエラン風にカスタムした車
    があり私も数年後に同じ事を…
    時代はケンメリ発売。専門学校へ上京を決意。そこで研修
    とは名ばかりの欧州観光にてマセラティやディーノにやや
    感激。シャンゼリゼのフィアットデーラでは怪しい仏語で
    当時好きだったX1/9にも座らせてくれました。
    カーデザインの伊誌で”STYLE AUTO”を現地調達。
    程なく真似た”CAR STYLING”が三栄から発売。創刊号を
    持っています。
    今は、日本でも多くの外車は見られますが、産まれた背景
    を肌で知ると理解が深まります。道端のシトロンDSを見
    ていたらオーナが勝手に車高調整を実演してくれました。
    航空機はやはり、いつかはスミソニアンですかね。

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