読み物程度の航空工学⑰ 小さなタブの大きな力

最近、尾輪式飛行機の事ばかり書いていたので、ちょっと路線を戻して飛行機の操縦系統のお話
今回は「タブ」って呼ばれる小さな操縦翼面です。
このタブと呼ばれる小さな操縦翼面は、エルロン、ラダー、エレベーターの各操縦翼面の先にくっついていて、
操縦翼面のニュートラル位置を調整します。
車だとアライメント調整箇所って感じですね

「航空機」って凄く精密に出来ているイメージがありますが「1000機も売れれば大ヒット商品」って航空業界、
「少数生産=治具を使って殆ど手作り」なので結構アバウトで、
全幅15m、全長7m位のグライダーで各部の寸法を実測するとcm単位で左右が違っていたりします(笑)
セスナを代表とする米国小型機メーカーもパートのオバちゃんがリベット打ってるらしい、、、

もちろん重量もバラつくし取り付け角度や構造物の捩じれもソレなりの精度なので、
製造番号兄弟でも飛ばしてみると全く性格が異なったりして「とっても個性的♪」(前向きにイキましょう)

「レースに使う競技機」や「記録飛行狙いの機体」は型や治具が狂う前の若い生産LOTの機体が使われるようで「ピシっ!」としています
僕が知っている機体で一番ピシッとしていたのはSoloFOXだったなぁ、、、
FB_IMG_1464336713595
プロトタイプFOXからの改造機だからかな?

一般流通している機体はそんなスペシャルじゃないから、各部の狂いは「機体の癖」となって現れます
「なんか、右にバンクする癖がある」とか
「いつも左ラダー踏んでないと真っ直ぐ飛ばない」、
などなど、、、
妙な癖を持つ機体はいっぱいあります。

もちろんそのまま使うと飛ばしていて疲れるので修正をして出来る限り癖を正します。
ここで使われる小さな操縦翼面が「タブ」っ言われるヤツです。

このタブは大きく分けて「固定タブ」、「調整タブ」、の2種類になります

①「固定タブ」
読んだそのまま、各操縦翼面の先端に固定された「タブ」でコレを地上で曲げて調整する事により、
舵面の空力的中立位置を変更(調整)できます。

左エルロンに固定タブが取り付けられている機体を例として見てみると
DSC_2173

エルロン先端にとびだした板がエルロン固定タブ 真っ直ぐだともちろん効果なし
固定タブ①

左に傾く癖のある機体を修正するには左エルロンのタブを上向きに曲げます。
固定タブ②

これによりタブに働く空気力で左エルロンの空力的中心位置が変化して、
エルロンがちょっと下がった位置が、保舵力0のニュートラル位置になります
(もちろん操縦桿は僅かに右に傾いた位置がニュートラルになります)
固定タブ③

ラダーの固定タブも同じ要領で
DSC_2174
(ラダーの先端にリベット止めされた板がラダー固定タブ)
いつも右のラダーを踏まなければ、滑りが止まらない(犬走り)しちゃう飛行機は
ラダーの固定タブを左に曲げると空力的中立点が変化して、ラダーを右にちょっと踏んだ位置が保舵力0のニュートラルになります。

こんな感じに空力的中立点を調整して真っ直ぐ飛ぶように調整します、
フレームの狂いをアライメント調整で真っ直ぐ走らせるイメージですね
ラジコン知ってる方にとってはおなじみの「トリム」を取る作業が、実機では固定タブの調整になります

②「調整タブ」
これも、読んだそのまま「飛行中に角度調整出来ちゃうタブ」です
「固定タブ」は着陸してから「おりゃつ!」ってひん曲げて調整しなきゃならないので飛行中はもちろん調整不能
大型機になると飛行中の燃料消費等のバランス変化の調整を行うためにエルロン、ラダー、エレベーターの3舵すべてに「調整タブ」が付きます

この調整タブを飛行中に操作して舵の空力的中立位置を変更して様々な飛行姿勢で保舵力を0にする事を「トリムを取る」って言います。

機体設計時に3舵(エレベーター、ラダー、エルロン)それぞれにタブの取り付けは可能ですが
機体の仕様要件やコストにより設定されるタブの種類は異なり
僕が乗ったことある飛行機だと3舵全部調整タブって機体はありません、、、
小さい機体しか飛ばしてないからなぁ~

中でも大切な調整タブが「エレベーター調整(トリム)タブ」
エレベータートリム
エレベーターの先端の小さい舵面で「エレベータートリム」って呼ばれていて

コクピットのトリムコントロールホイールを回して
トリムコントロールホイール
ピッチ方向の補舵力0での機体姿勢を調整します。

調整タブ①
エレベータートリムはピッチ方向の機体姿勢≒対気速度になるのでとても重要で、
正確なトリムを取れるだけで飛行機が従順に飛ぶようになります。

使い方は、
離陸時は適切な操舵感覚と空力的中立位置になるように「Take off Position」にあわせます。
(写真のTake Offって書いてある場所にインジケーターの▲をコントロールホイールを回して合わせます)

飛行中にピッチアップの姿勢を維持したい時は、操縦桿を引いてピッチUPさせて
調整タブ②

トリムコントロールホイールをピッチUP方向に回して、調整(トリム)タブの角度を下に曲げていくと
タブに働く空気力でエレベーターの空力的中立位置が変化して
エレベーターを引いて保持している保舵力が0に調整することができます
調整タブ③

他にも「サーボタブ」 「バランス タブ」 「スプリング タブ」とか変わり種がありますが、
操舵力や操舵力の調整に用いるタブです

世界恐慌の時代に、、、
「弱小3ちゃん飛行艇屋の駆け出し技師」にほぼ全損機を修理(作り直し)させた「イタリア人パイロット」が
川から強引に離水しようとしてひっくり返りかけた時にグルグルハンドル回したのも調整タブで、、、
エルロン
機体の構成と「新しく付けたやつ!!」の駆け出し技師の助言から、
ぐるぐる回していたのはエルロンの調整タブで、調整方向は”右バンク方向”

・エレベータータブは「無いと飛ばせない」くらい重要なので間違いなく標準装備
・戦闘機ほどの推力になると上昇中のPファクターに対抗するためのラダートリムは必要、コレも標準装備でしょう

残る操縦翼面はエルロンになり
普通エルロンタブは左右の翼に燃料タンクを持つ大型機の燃料消費に伴う左右重心位置の補正に使いますので
こんな小さな飛行機に必要なのかは?ですが、、、

何が起こってテンパっていたかを考察すると

通常離陸は離陸前チェックリストの読み上げ確認で「適切な離陸位置」にトリムタブを調整して、
適切な空力的中立位置(≒離陸時の操舵力)に合わせますが
翼型変更を含むほぼ作り直しで基本的な操縦特性不明な上に「全損修理ついでのエンジン換装」って荒業するから、
操縦特性は完全に未知、、、

設計
改造箇所から推測すると
機体側では、翼型変更
高速性能を求めた翼型に変更って事は、
「翼の厚みが薄く、」
「前縁半径が小さく、」
「キャンバーも薄い」
 薄っぺらくて鋭い形になっています。

この翼型変更による高速化の代償は、
①低速では発生できる揚力が少なくなるので離着陸(水)性能のさらなる悪化と
②低速で同じ揚力を得る為にも迎え角を増やさなければならない(≒より機首上げ姿勢が必要)
③失速特性の悪化(穏やかに失速(剥離)せずに一気に空気の流れが剥がれる)を招いています。

①と②は「主翼の取り付け角を0.5度増やして」対処してましたが「寝起きのボケた頭の勘」だろぉ、、、
大丈夫か?

エンジン換装による変化では
エンジン重量と重心位置の変化に始まり
主翼の上にエンジンが搭載されている機体なので
機体の重心位置とエンジン推力軸が一致していないのでエンジンパワーの増減によりピッチ姿勢が変化する悪癖を持っています。
(対策としてエンジンの取り付け角を上向き方向に調整してピッチDownをある程度抑え込む事が可能ですが、癖の悪さは消せません)
パワーUPしたエンジンの影響によりエンジン換装前よりフルパワーでの機首下げ作用がより強く作用するようになり
S1 悪癖1

同時にプロペラトルクが増大するので右回転エンジンでは左方向へのロールモーメントが大きくなる
S1 悪癖2

改造による機体特性変化は
主翼翼型変更による「低速性能、離着陸性能を悪化」
エンジンの高出力化により「パワーONでの機首下げ&左ロールモーメント増大」

しかも試験飛行未実施で機体操縦特性不明で「適切な離陸位置」のトリム位置不明
改造前の離陸トリム位置でのエレベーターの空力的中心位置では「機首下げ」が強く
エルロントリムは「中立」で離水を試みたと考えられるのでエンジントルクの影響で「左ロールモーメント」が強い

結果、、、
機首を水面に突っ込み気味かつ左のフロートを水面に押し付けて抗力増大により
正しいプレーニング(滑水姿勢)に入れず離水できなくて這いずり回って
適切な離陸速度以下で無理やり浮かせたから後退翼の悪癖の「翼端失速」起こして引っくり返リ掛けたって事ですね
(実機だったら離陸直後に翼端失速でひっくり返したら一発で堕ちますが、、、まぁ娯楽作品ですから)

しかし、、、よく人乗せて飛んだよな、あのヲッサン、、、、
本人が乗りたがったと言ってもねーちゃん乗せて

娯楽作品はハッピーエンドなので物語を楽しめばOKですが
実機でのタブ(トリム)は強大な力を持っているので、飛行中の破損や故障は致命的な事故に発展します。
大型機では水平安定板の取り付け角度を変更する方法でトリムを取るので
この部分の破損は人力では抗えないほどの機首上げや機首下げを引き起こします。
僕の記憶だけで3機堕ちています。

最近ではリノのエアレーサーが飛行中にエレベータートリムタブが破損して+16gの急上昇
※高速飛行時のトリムは機首下げなので破損すると一気に機首を上げます。
パイロットは強大なgで意識を失い(G-LOC)墜落しています。
※あまり深く調べない方が良いです、かなり衝撃的な映像に遭遇します。

無いと飛べないくらい便利なタブ(トリム)ですが大きな力も持っているので
上手に付き合っていくことが大切です。


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「読み物程度の航空工学⑰ 小さなタブの大きな力」への2件のフィードバック

  1. 娯楽作品ですし。(笑)
    まともなフラップも無い時代で離着陸の距離がいるから水上機、プロペラトルク対策で左右の翼長を違えてたりしてましたしね。
    あ゛、食玩でこの機体とかマッキのレコードブレーカー持ってマス。(爆)
    オフの時に持参しませうか? (再爆)

    1. 「タブ」の写真探して検索掛けたらヒットして
      悪ふざけで考察したら本文と同じ位のボリュームになっちゃいました(笑)

      レギュレーションで締め付けたジムカーナみたいなエアレースより
      「なんでもいいから最速を決めよう」ってオープンクラスのエアレースが好きですね~(笑)

      左右の翼長違いはイタリア製でしたよね、
      たしか、、、!?

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