適切なスプリングの選定方法を考える ① バネ上重量と固有振動数

前回のフロント設定変更の際に感じたリアサスペンションのレート不足によるロールオーバーステア傾向
フロント設定変更前にも同じ傾向にはあったのですが、パワーONでの旋回力の足しに使える程度だったので
「パワースライド遊び=楽しさ」で良しとしていましたが

設定変更でプリロードによる伸び縮みストロークの適正化(縮みストローク増し)
によりフロントの旋回力が増加した事によりロールオーバーステア傾向がより顕著になりました。

こんな経緯でリアスプリングの設定の見直しに入り
改めて「適切なスプリングレート」を考えてみました。

最初に、車両に求める運動性を定める為にホイールレートとバネ上重量によるサスペンションの固有振動数を決めます。

つまりは「どんな使い方をするか?」を定めます。

用途別によるサスペンション固有振動数の傾向は
高級車           1.0~1.5Hz
乗用車 街乗り~ワインディング  1.5~2.2Hz
乗用車 ワインディング~サーキット 2.2~2.7Hz
主にサーキット走行  3.0Hz~

タイラップ号の使い方は「街乗り~ワインディング」
なので狙う振動数帯は2.3Hz付近になりますので
この周波数になるように前後スプリングレートを設定します。

次に求める固有振動数からスプリングレートを導きます。
最初に前後重量配分(重心位置)から前、後軸重量を求め、更に1輪荷重を求める
車両重量合計 1489.33kg
モーメント合計 2030.386.16kgfmm
ホイールベース2710mm
アーム(重心位置) 1363.29mm
前後重量配分 49.7:50.3
前軸重量 740.2kg
後軸重量 749.1kg

これにドライバー&ナビの重量を加えて 設計単位重量 77kg x 2 = 154kg
アーム 1350mm
モーメント 154kg x1350mm 207900kgfmm
車両重量合計 1489.33kg + 154kg 1643.33kg
モーメント合計 2030386.16kgfmm + 207900kgfmm = 2238286.16kgfmm
アーム(重心位置) 2238286.16kgfmm ÷1643.33kg = 1362.043mm
前後重量配分 49.75 : 50.25
前軸重量 825.94kg
後軸重量 817.39kg

前単車輪重量、825.94kg ÷ 2 = 412.97kg
後単車輪重量、817.39kg ÷ 2 = 408.70kg
この前単車輪重量からバネ下重量を減じた値がバネ上重量になるので、、大物を拾い出してみると
フロントばね下重量
ホイール重量 7.2kg
タイヤ重量10kg
フロントサスペンション系重量 7.8kg  
合計25kg

リアばね下重量
ホイール重量 7.2kg
タイヤ重量10kg
リアサスペンション系重量 18.8kg
合計36kg

フロントバネ上重量は412.97kg - 25 kg = 387.97kg
リアバネ上重量は408.70kg - 36 kg = 372.7kg

求められたバネ上重量と固有振動数(用途)を固有振動数の式に代入してホイールレートを求めると

固有振動数=√(スプリングレートNm ÷ 単輪バネ上重量) ÷(2π)

フロント
√(X ÷387.97) ÷ (2π) =2.3
√x ÷ √387.97 ÷ 2π= 2.3
√x ÷ 19.696 ÷ 6.2831= 2.3
√x = 2.3 x 19.696 x 6.2831
√x = 284.63
x=81013.93Nm
81013.93÷9.81÷1000
8.25kgf/mm

リア
√(X ÷372.7) ÷ (2π) =2.3
√x ÷ √372.7 ÷ 2π= 2.3
√x ÷ 19.305 ÷ 6.2831= 2.3
√x = 2.3 x 19.305 x 6.2831
√x = 278.98
x=77829.84Nm
77829.84÷9.81÷1000
7.93kgf/mm

リアはレバー比1.5なので
ホイールレートx(レバー比の2乗)=スプリングレート
x’=7.93 x 1.5 x 1.5
x’=17.85kgf/mm

アイバッハスプリングのカタログから耐荷重を2G(372.7kg x レバー比1.5 x 2G =1118.1kg )を満足する18kgf/mm付近のスプリングを調べると
0120-060-0180
自由長120mm
スプリングレート18.35kgf/mm
ストローク61mm
密着荷重1120kg
密着荷重がギリギリですが何とか収まってます。

このスプリングを採用するので念のために固有振動数を求めると
単位換算とホイールレート
18.35kgf/mm=18.35x9.81x1000
18.35kgf/mm=180013.5Nm
レバー比1.5でホイールレートを求めると
ホイールレート=180013.5÷1.5÷1.5
ホイールレート=80006Nm
固有振動数
x=√(80006Nm ÷ 372.7バネ上重量) ÷ (2π)
x=2.33Hz

狙いどころには十分入っています♪
固有振動数2.33Hzでのフロント及びリアスプリングレートは
フロント 8.39kgf/mm
リア 18.35kgf/mm

現状は10kgf/mmのスプリングが入っているのでフロントが僅かに硬い設定になります。
現状の固有振動数を調べると
フロント 10kg/mm 2.53Hz
リア 14.28kg 2.06Hz
前が硬くて後が柔らかいのが数値でも確認出来ます。
ココまでの計算でリアのレート不足感覚は数値でも確認でき、次のスプリングの選定も完了

リアレートUPでフロントとリアの固有振動数を近付けてフラット感のある乗り心地と運動性の向上を狙います。
ブログランキングに参加しています、記事を気に入っていただけましたら
↓クリックしていただけると嬉しく思います。

にほんブログ村 車ブログへ
にほんブログ村

全般ランキング


「適切なスプリングの選定方法を考える ① バネ上重量と固有振動数」への3件のフィードバック

  1. はじめまして
    ブログの内容、とても参考になります。
    誠に勝手ながら、バネレート選考の為に利用させていただいてます。
    私はトヨタ86(ZN6)のリアサスのレート選考に悩んでいます。
    固有振動数を2.3狙いで計算の結果、8.7kgのレートとなりました。
    しかし、ダンパストロークが50mm、バンプラバーが40mmの車高調ダンパーの為、リア片輪重量270kgで計算すると、1Gで50.84mm沈む(270×1.28レバー比×1.28ストローク比÷8.7kg)ため、1G状態でほぼバンプタッチの可能性があります。
    この場合はプリロード調整しかないのでしょうか?

    1. ウエダさん
      コメントありがとうございます。

      計算がんばりましたね~
      最初は取っ付きにくいんですが、バネ上固有振動数を理解してしまえば他車に乗り換えてもスプリングレート選択に困ることが無くなりますので
      ご活用ください

      良く見掛ける勘違いで
      「仮定した走行時のGをダンパーストロークで割り算してレートを求める」では正解にはたどり着けませんから
      「バネ上固有振動数からスプリングレートを求める」だけでも大きな進歩です

      ご質問のプリロード調整ですが

      質問が「プリロード調整が必要か否か」ですと
      最初にウエダさんがプリロード調整の目的を理解しないと先には進めませんし
      ウエダさん自身で判断出来ないので 先々ご自身でセッティングが決められません

      特に重要なのが
      現状では必要スプリングストロークが求められないのでスプリング自由長の選択が出来ないはずです。

      プリロード調整に関してはいくつか記事を書いていますので参考にして下さい
      http://ornis1975.com/2014/04/16/プリロード調整とスプリングの特性-①/
      ブログ内検索を掛けて頂ければHitしますし
      R33 GT-Rのリセッティングを行った過程も参考になると思います。

      「誰ソレが こーすれば良いよ」って話を鵜呑みにして内容を理解しないでセッティング変更をすると
      別の意見に当たった時に混乱するだけです

      プリロード調整の目的を理解した上で再度ご相談下さい

      もう少しがんばれば一気に理解が進むところまで来ていますので頑張って下さい!

ウエダ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です