前回までのプリロードに対する理解は、
地上に接地した1G状態でロアシートを絞めこんでいくと、
全長調整しないので、絞めこんだ分だけ車高が上がり、ダンパーの1Gでの縮み位置が上がって行きます。
ここまでのイメージは簡単ですよね、
「ダンパーの伸びと縮みのストロークをバランス良く設定してまともに動く脚にしましょう」って基本的なプリロード設定をしました。
前回、プリロードを掛ける事の副作用として「スプリングレートの標記」を調べて分かった事は
「表記されているスプリングレートは、そのスプリングの”設計性能”を発揮しているレート」であり
スプリングの特性から、プリロードを掛けた分だけ深くストロークするので
実効ストロークがスプリングの有効ストローク後半でレートが高くなる領域に掛かる可能性がある
これは
「ダンパーストロークに対して有効ストロークの余裕が少ないスプリングにプリロードを掛けるとストローク後半でレートが上がってしまう=平均レートが表記レートより高くなる」
って事です
実際にレートが高くなるのはストローク後半(バンプして深く沈んだ時)だけなのでレート変化だけを見ると1G付近ではほとんど変化が無く見えますが。
ものさしを変えて固有振動数で考えると
「同じスプリングで平均レートが上がる=固有振動数が高くなる」事になるのでプリロードを掛けるとスプリングの伸縮スピードが速くなるって事になります。
しかもプリロードを掛ける事により深くストロークするのでスプリングの受ける応力は高くなり、
スプリング鋼には厳しい状況
スプリングを縮める動きは路面の凹凸や遠心力&慣性力からの入力ですが、伸びるスピードはダンパーで制御する領域
伸び側の感覚って乗り心地の感覚に直結しているので、同じレートでもプリロードを掛けると跳ねる&固くなるって感覚につながります。
スプリングが深くストロークして多くのエネルギーを蓄える事により「伸びるスピード」が速くなり、
同じ単位時間の間に吸収しなければならないエネルギー量が多くなるので
速いストロークスピード(ダンパーのピストンスピード)で必要な減衰力が高くなり、
減衰力を調整しなければ跳ねる動きが出てきます。
伸び縮みを一つのダイヤルで調整するシングルアジャスターのダンパーで、跳ねる動き(伸び高速側)を抑え込むために減衰を高めれば、
全体の減衰力(縮み高速&低速、伸び低速の減衰力)が伸び高速側に引きずられて高まり
固い(動かない)脚になります。
伸び縮みの高速、低速別々に調整できる4wayダンパーで伸び高速側だけを絞めれば美味しい部分を見つけられるかもしれませんね
Koni Sportsは伸び側減衰力のみのアジャストなので縮み側が影響を受けないので
一般のシングルアジャスター(伸び、縮み同時変化)より影響は限定的です
逆に減衰力一定でプリロードを掛けていくと平均レートが高くなり、相対的にダンパーの減衰率が下がる事になります。
ツインスプリングでプリロードを掛けていくとある一点で乗り心地が急に良くなる現象はこの辺りに要因がありそうです。
ツインスプリングだと1G付近を受け持つレートに対しては低減衰率、1G以下の伸び側のプライマリーレート領域は高減衰率なのでより強く表れるのでは?
考察が十分ではなく怪しい感じになってきたのでこの位で
もう少し考えてみます、、、
結論として、
実際にプリロードを掛けていって跳ねるような動きやスプリングに硬さを感じたら
現仕様で使っているスプリングの有効ストローク後半のレートが上がる領域に掛かっているのでスプリングの仕様変更が必要になります。
この場合の仕様変更はスプリングの有効ストロークを長い物に交換する事です。
つまり、ダンパーストロークの伸び縮みを適切に割り振る為にプリロードを掛けてフィーリングが悪化した場合は
現状のスプリングの有効ストローク(mm)+プリロード(mm)分の有効ストロークを有するスプリングへの交換すれば伸びスピードを抑える事となり
プリロードによる跳ねや硬さの悪影響を避け
さらに有効ストロークの長いスプリングに変更すれば車両の動きがマイルド(ルーズ)な方向になります。
逆にレートに対して硬さは良いけど、動きが鈍く感じる場合は「ダンパーストローク=スプリング有効ストローク」まで有効ストロークが短いスプリングを
選択すれば同じレートでレスポンス向上を狙うことが可能です。
この為に直巻スプリングを使ったサスペンションはロアリングが可動式になっていて様々な自由長のスプリングを組むことが出来ます。
つまり、
ロアリング調整機能はプリロード調整とスプリング自由長変更への対応が目的です。
車高の調整に用いる調整箇所ではありません
スプリングの有効ストロークの確認は各直巻スプリングのカタログを確認すれば適切なスプリングを選択できます。
各メーカーから色々な設計のスプリングが販売されているので、自分の好みで軽くて速い動きのスプリングor重くて遅い動きのスプリングを選べばOKです。
今回分かった事はこの位、もう少し調べてみます♪
もう少しシンプルにまとめてました
プリロード調整とスプリングの特性 ③
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コメント失礼します。
よくある勘違いなのですが、プリロードをかけてもばねが硬くなることはありません。
なぜならプリロードをかけても1G時のスプリング長さは同じであり、同じレートのところからスタートするからです。
とにかく、1Gの時のスプリング長さについて考えるとわかると思います
ヤスさま
コメントありがとうございます。
良くある勘違いですが
スプリングレートは一定には作れません
単位としてkg/mmと表記されているだけで
ストローク中盤の安定領域のレートを代表レートとして表記しています
縮み初めは表記レートより低く
有効ストローク後半から表記レートより高くなります、
これはコイルスプリングの基本特性です。
またエンド形状によってもレートの立ち上がり特性は変化します。
プリロードによる車高変化だけを見ればヤスさんの意見になります。
それは静止状態での「荷重とスプリングのたわみ量の関係は一定」は確かですが
スプリングをストロークさせて動的に考えると
スプリングストロークを使う量(深さ)でレート変化が発生しています。
これは同じレート表記のスプリングでもスプリングのエンド形状、スプリング径、自由長、耐荷重、により特性が異なる事で認知されています。
ダンパーストロークに対してスプリングの自由長が制限される直巻きスプリングの車高長は特性が顕著に表れます
参考にさせていただいております。
1点質問させてください。
ストローク後半でレートが高くなることは理解していますが、「プリロードを掛ける事により深くストローク」が理解できません。
例えば、全長車高調でプリ0mmとプリ20mmで同じ車高にします。1G状態では両方とも自由長からの縮み量は同じと考えます(合ってますよね?)。同じ道を走り同じ凸を乗り越えた時、1Gからの縮みストローク量は同じと考えます(自由長からの縮み量も同じ)。これが正しいとなると「プリロードを掛ける事により深くストローク」の意味がよくわかりません。
何か別の私の考え違いがあるのでしょうか?
コメントありがとうございます。
前提を決めて説明します
ダンパーストローク 100mm
スプリング有効ストローク 130mm
この状態で”プリロード0″での1Gダンパーストロークを50mmとします。
縮みストローク50mm
伸びストローク50mm
スプリングストロークは 50mm+50mm=100mm
になります
スプリング使用ストロークはスプリング有効ストロークの77%でストローク後半のレートが高まる領域に入る前とします
このサスペンションにプリロードを20mm掛けると
縮みストローク70mm
縮みストローク30mm
に変化します。
スプリングストロークは
70mm+30mm+プリロード20mm=120mm
になります。
ご理解の通り自由長からの縮み量は同じですが
ダンパーの1G高さがプリロード20mmの分だけ高くなり1Gからの縮みストロークが増えています。
このプリロードにより「20mm深くスプリングがストローク」します。
スプリング使用ストロークはスプリング有効ストロークの92%になるのでストローク後半のレートが高まる領域に入ります。
ご存じの通りスプリングの表記レートは「安定領域のレート」を代表レートとして表記しているので
より深くスプリングがストロークする事で、有効ストローク後半のレートが高まる領域に入ります。
これが「プリロードを入れるとスプリングが硬くなり跳ねる」理由です。
ドライバーが感じるフィーリングはスプリング使用ストロークのスプリングレートの積分になるとイメージしてください
この説明はブログにも書いていますので参考にしてください
ご理解いただけましたでしょうか?
ご回答ありがとうございます。
仰ろうとしていることが、なんとなくわかった気がします。
私が思っていたことは
「同じスピードで同じ凸を乗り越えたときは、プリロード0mmでもプリロード20mmでもバネのストローク(自由長からの縮み量)は変わらない。だから乗り心地が硬く感じる(跳ねる)理由にはならない。」
タイラップさんの仰られていることは
「プリロードを掛けることにより、縮みストロークを増やせる。よってより大きい凸をストローク内で乗り越えが可能となる。ただしその場合はバネのストローク量(自由長からの縮み量)が増え、ストローク後半のレートの高まる域を使うことになった場合は、跳ねる動きになる。」
っていうことでしょうかね。
(間違っていたらゴメンなさい)
一般的に「プリロードを掛けると硬く感じる」は、同じスピードで同じ凸凹を通った時の比較のことだと勝手に思っていたので、疑問になり質問させていただきました。
その通りです
したがってセッティングの順番としては
①現状のスプリングで「許容できるバンプタッチ」までプリロードを掛けて
(ただしプリロード+ダンパーストロークがスプリングの有効ストローク以下を守らないとスプリングが塑性変形(ヘタリ)してしまい 最悪は線間密接を起こします。
②掛けたプリロード分だけ有効ストロークが長いスプリングに交換して同じプリロードを掛ける
これでストローク後半のレートが高まる領域を避ける事が出来ます。
ただし車高調に収まるスプリング自由長との関係があるので自由長選択には注意が必要です。
更にプリロードの目的は伸びと縮みのストロークバランスの調整なので
フルボトムを避けるためにプリロードを掛けて縮みストロークを増やすと、ストロークが短いダンパーだと伸びストロークが不足して「イン側接地切れ」によるトラクション抜け、路面不正に弱いピーキーな動きになります。
また、
レートUPによるフルボトム回避は常識的な範囲のレートではほぼ不可能です。
バネ上固有振動数2.5~3.0Hzの走行会仕様のサスペンションkitでも鋭い突き上げの「ハーシュネス」は15Hz以上の速い入力なので、
バネ下は自由運動領域でバネ上は動かずにバネ下だけが動くので突き上げます。
したがって縮みストローク量以上の凸はバンプタッチは避けられません
加減速や旋回によりピッチやロールが発生すればその分だけ伸びと縮みのストロークバランスが変化するのでバンプタッチ迄の許容ストロークが少なくなり、路面不正の影響(許容できる凸凹の高さ)を受けやすくなります。
ご返信ありがとうございます
これもよくある勘違いで、プリロードをかけるとバンプストークが増えて、バネの深いところまで使う。するとレートの上がったところ迄使うからバネの固さを感じる、という理屈も一見正しいように思えますが、実際の走行ではそれも無いのです。
なぜならバンプストロークが少なかった時はバンプラバーに当たっていたからです。
硬く「感じる」のは別のところに原因があると思われます。
それはあなたの使っているダンパーのストロークが短いからですね、、、
ダンパーストローク量とスプリングストローク量の関係を考えて下さい
あるストロークを持つダンパーに対して
短いスプリング自由長(≒スプリングストローク)の組み合わせはストローク後半のレートが高まる領域に入り易いですし
長い自由長のスプリングを組めば中間ストローク位置のレート安定域が広いのでレート変動が少なくなります。
なんだか
スプリングストローク位置でレート変化しちゃうと困るみたいですね(笑)
JIS規格でもスプリングレート表記は「ストローク30~70%の平均値」と規定されていますし
メーカーのスプリング特性グラフでもレート変動は表記されています
http://ornis1975.com/2020/08/25/スプリングレートの表記はjis規格!/
そろそろ面倒ですね、、、
規格の意味と特性を理解して使えば好きな特性がつくれますし
プリロードはサグ調整の結果でしかありません
プリロードにより好まない特性が現れたらスプリング自由長を長くしてダンパーストロークをレート安定域に収めれば解決出来ます。
そんなにこだわる意味無いでしょ、、、
「明確な理由」を持ってスプリング自由長を選択していますか?
ストロークの長さは長くても短くても原理は同じです。
スプリングストローク位置でレート変化することは分かっています。でもそこではありません。
本文中に、
「プリロードを掛けた分だけ深くストロークするので
実効ストロークがスプリングの有効ストローク後半でレートが高くなる領域に掛かる可能性がある
とあります。」
では、質問です。プリロードをかける前は、そこまで(青線まで)ストロークしなかったのはなぜですか?
別に私はタイラップさんを馬鹿にしているわけではありません、気づいてほしいだけです
これは本文中の図を見て、プリロードを掛けていない時と、掛けた時とで、それぞれ1Gがどこか、そしてストロークがどこからどこまでか(伸び切りからバンプタッチ位置又はフルボトムまで)を線で書き込んでみればわかります。
バンプストロークが少なかった時はバンプラバーに当たっていたからそこまで行かないだけです。
そしてプリロードを掛けて、そこまでストロークするようになった時、当然バネの硬い所を使うことができます。
しかし、その領域は以前はその位置ではバンプラバーに当たっていたからそれ以上縮まなかった領域です。違いますか。
ですのでバネの硬いところまで使えるようななったからバネの硬さを感じるというのが実は違う事になります。ここに気づいていない方が多いですが気づいて欲しいと思います。
それと、もう一つの勘違いは、バンプストロークが増えて、バネのレートが上がる上の方まで使えるようになったとしても、「全部使い切れば」平均的にレートは上がるでしょうが、「1Gからの」硬さは変化しません。
「全部使い切れば」平均的にレートは上がります。しかしその領域まで縮む余裕ができただけでは、「そこまで縮まなければ」レートは上がりません。ですから「1Gからの」硬さは変化しません。
それが変化すると思われているのも間違いをさらに深めている原因と思われます。
他に読んでいる方も理解していただければと思っています
お邪魔いたしました
他に読んでいただいている方へは
「乗り心地改善中」さんとの会話ですでに対応できています。
あなたの考え方だと
「同一レート 同一自由長でスプリングの銘柄変更だけで乗り心地の違いを感じる理由」の説明が出来ません
お互いの考え方が異なりますし
あなたは僕よりも詳しいようなので、
ご自分で情報発信して頂いた方がよろしいと思います。
さようなら
先日、問い合わせさせてもらったウエダです。
プリロードに関するブログを拝見しましたので、理解の確認も合わせてコメントさせていただきます。
まず、プリロード調整は『1G状態のダンパストロークの伸び・縮みの割合を調整すること』である。(4:6~5:5)
仮に、プリロードをかけた際には、
ダンパーストローク+プリロードよりスプリングの有効ストロークが長いことが必須。
またスプリングの深いストローク部分の『乗り心地の固さ』を抑えるためにスプリング有効ストロークの約70%のストローク内にダンパーストロークが入るようなスプリング自由長を選択する。
そのため、
バネレート 8.7kg
ダンパーストローク 60mm
(バンプラバーのクビレ長含む)
ストローク比 4:6
バネ上重量 250kg
レバー比 1.28
の時のプリロードとスプリング自由長は、
250×1.28×1.28÷8.7=47.08 mm (1G)
ストローク比(mm) 24:36(縮:伸)
プリロード 47-36=11 mm
スプリングストローク 11+60=71 mm
スプリング有効ストローク
x×0.7=71
x=71÷0.7
x=101.42(mm)
スプリング自由長 有効ストロークが101.42mm以上のスプリングを選ぶ。
と、なると思います。
分かりにくい文面ですが、ご教授お願いします。。。
ウエダさん
プリロードの使い方と計算大丈夫みたいですね
実際に車両に組んだ場合はスプリング初期ストロークのレート立ち上がり領域があるので
計算プリロードより実行プリロードは僅かに大きくなりますし
バネ上重量の誤差もありますので
実車セッティングの際には実測してサグの微調整が必要です。
有効ストローク102mm以上を満足するスプリングの自由長はおおよそ200mm付近になりますので
「ダンパーに収まるか」「全長調整で狙った車高が出せるか」の確認が必要になります
※もちろんスプリングのカタログで有効ストロークを確認しながら自由長選択してください
(僕なら可能な限り長いスプリングでゆっくり動かします)
スペースに余裕があれば
上側のスプリングシートとスプリングの間にスラストベアリングを組むとフリクション低減とレートの安定が良くなります
※構造的に上側だけで問題ありません
上下に組んでもスプリングがクルクル回るだけで意味がありません
下側にベアリングを組むと水と砂埃の通り道になるので短命になります。
スプリングレート選定のポイントになるのはフロントとリアの固有振動数差で
基準となるのはあくまでもノーマルスプリングの前後固有振動数差です。
86の前後固有振動数差が幾つかは自分にはわかりませんが リアが僅かに硬くなっているはずです。
(E36 M3は0.3Hzほどリアが高い数値になっています)
最近解ってまだブログにはUp出来ていませんが
スプリングでのバウンス系はリアを僅かに固有振動数を高くして
スタビライザーでフロントのロール剛性を僅かに高める事がFRの基本セッティングになっているようです。
セッティング頑張って下さい!