スプリングに与えるプリロードに関して、少し理解した事を一度まとめておきます
サスペンションプリロードに関しての記述って色々ありますが、
バイクのサスペンションセッティングに関する書籍が的確ですね、
バイクユーザーの方がプリロードを正しく理解していると思います。
結局プリロートって、「ダンパーストロークのどの位置に1G合わせるか?」って事に対する結果だと考えます。
バイクのサスペンションセッティングの最初期に行うのが「サグ出し」と言われるセッティングで
プリロード調整をして乗車1G状態での縮み量をメーカー推奨値に設定する作業です
これはライダーの体重差による1Gストローク位置を補正して、縮みと伸びのストロークバランスを整える事を目的とします。
車の場合も同じで乗車1G状態での伸び側、縮み側のストロークバランスを整える事が主目的で、
このバランスは基本的に伸びストロークと縮みストロークを半分ずつに合わせるのが基準になります。
つまり、100mmのストロークを有するダンパーは
1Gまでの伸びストロークに50mmを使い、
残りの50mmを縮み側に割り振ります。
この部分はセッティングの好みが反映されてきますが、あまり大幅にバランスを崩すと伸び切りや底付きが発生します。
単純に考えると
重量に対して低いレートを設定したサスペンションはプリロードが必要になり
逆に重量に対して高いレートを設定したサスペンションはスプリングが遊びます。
具体的な例を出すと。
①
重量300kg
ダンパーストローク100mm
レート 6kgf/mm
このセッティングだと
300kg ÷ 6kgf/mm = 50mm
1Gストロークまで50㎜なのでプリロード0㎜となり
②
重量300kg
ダンパーストローク100mm
レート 3kgf/mm
300kg÷3kgf/mm=100mm
1Gストロークまで100㎜なので①と同じ1G車高(ストローク)にする必要プリロードは50㎜となります
(①と②の関係は、よくあるストラットノーマルサスペンションと街乗り車高調整式の関係です)
③
このダンパーをそのままレートUPさせると
重量300kg
ダンパーストローク100mm
レート 9kgf/mm
300kg÷9kgf/mm=33.3mm
1Gストロークまで33.3㎜なので33.3mm-50mm=プリロード-16.6㎜となり
スプリングを16.6mm程遊ばせないと①と同じ1G車高(ストローク)にはなりません
基本的な考え方はこれだけ、、、
盲目的にプリロード0mmが基本って信じてメーカー推奨値のプリロードを抜くと
底付きバンバンになります(笑)
②の状態だとプリロード0で1Gで既に底付き、バンプラバーに乗っている状態ですね
この状態での体感は、、、
路面が良く状況だとシナシナと動いて乗り心地が良い
バンプラバーのストロークが残っているので意外と動く&伸び側ストロークが多いので乗り心地が良く感じる
が大きなギャップは突き上げる
(言うまでもありませんが、フルストローク状態で突き上げてます)
③の状態は②よりは遥かにマシですが、
レートUPで固有振動数が上がり、ピッチングスピードが速まりピョコピョコした動き
減衰力を上げれば落ち着きますが、伸び側ストロークが短くなる分キッチリ乗り心地が悪化します。
車高調サスペンションが乗り心地が悪い一番の要因は「伸び側ストロークが減る事」です。
つまり、、、
「ネジ式の車高調サスペンションは、車高調整できません!」
伸び、縮みのストロークバランスを整えたら、車高はナリになります。
もちろん車高を優先すれば、伸びと縮みのストロークバランスに悪影響を与えます
「じゃあ具体的にプリロードの設定はどうすれば?」
ここからは全長調整式のセッティング方法にも当てはまります。
本来なら先にバネ上重量と固有振動数からスプリングレートを設定するのが筋ですが、
既に装着済の車両のセッティング方法です。
1.ストロークを確認する事
現状のダンパーのストロークを確認します。
伸び切りからバンプタッチまでの長さが基本になりますが、
僕の場合はバンプラバーのクビレの長さも加えます
(くびれの長さも2次スプリングとして機能するのでストロークとして使えます)
2.ダンパー全ストロークに対して1/2を求める
単純にフルストロークを1/2を求めます。
ストローク100mmだったら100÷2で50mm
3.ダンパーシャフトに目印をつけて現状のプリロードでの1G状態のストローク位置を計測します
計測方法は色々ありますね、
①ダンパーシャフトにシリコングリスを塗る
②タイラップを巻いておく
③後日の手間を省くなら一度分解してダンパーシャフトにOリングを入れておく
(僕はこの方法です 1G測定の後に走行後のフルストローク位置も確認できます)
①~③のどれかを実施したらそーっとジャッキを下してサイドブレーキを解除して静止1G状態を作る
(サイドブレーキを解除しないと下がりきらない場合があります)
4.もう一度ジャッキUPして1Gストローク位置を測定
この測定値が1/2ストローク位置になるようにプリロードを調整をします
言うまでも無く沈んでいればプリロードを掛けて、浮いていればプリロードを抜きます。
5.プリロード設定が完了したら、メーカー基準値になるように全長調整を行って車高を合わせます。
ここは全長調整式サスペンションなら簡単ですがネジ式は基本的に調整不可能
じゃあ「ネジ式はどうするんだ?」ってトコですが
要は取り付け位置を変えれば良いだけなので上げる方は簡単
アッパーマウントにスペーサーを作って入れたりやピロカラーの長さを変更して対応してください
上げるのは簡単ですが下げれないでしょうね、、、、
通説は、
「ヘルパースプリングを組んだ車高調はダメ!」 「プリロード0mmが基本」
とか色々ありますが、
プリロードもサスペンション設計の一部として設定されている部分なので、
メーカーが設定したプリロード設定は大切な要素です。
次に、「なんで乗り心地が悪く感じるか?」ですが
基本的に車高調サスペンションはストロークが短く設定されているので、
プリロードを掛け事による伸び側ストローク減少を感じていると思います。
M3に組んだKoni Sportはノーマルサスペンション並みのストロークを確保したら、
乗り心地は明らかに改善されました
レートUPした車高調にテンダー(アシスト)スプリングを組むと乗り心地が改善できるのは、
余った伸び側ストロークを使えるようになるからです。
更にハイレートなプライマリースプリングはより極端な使い方で、
1G荷重のほとんどを合成レートで動かすので、乗り心地とトラクションが両立できます。
さらにダンパーストロークに対して自由長(=ストローク)の短いスプリングの組み合わせで
プリロードを掛けるとスプリングストロークのより深い部分まで使う事になるので
スプリングストローク終盤(全ストロークの75%以上)でレートが上がってくる領域
に入るため、スプリングが固くなります。
スプリングレートは0からフルストロークまで一定ではありません
縮み初めの数%は表記レート以下になり
フルストローク付近は表記レート以上になります
この間の安定した中間ストロークのレートが一般的に表記されているスプリングレートです。
つまりストローク位置でレートは変わっています
ダンパーストロークに対してスプリングストロークの関係次第では
「プリロードを掛けるとスプリングが固くなる」は完全には間違いではありません
ダンパーストロークに対してスプリングストロークの75%以下で満足できていれば表面化しない事象です。
この状態でのフィーリングは「路面がソコソコよければ快適だけど、大きな段差を通過すると固く突き上げる」
って感覚が出てきます。
ハイパコやアイバッハが奥で腰がある固さ、乗り心地が良く感じるのは
表記レートでの作動幅が他メーカーより広い事がポイントです
つまり、同レートでもストロークの長いスプリング(耐荷重が高いと同意)の方が乗り心地が良く、
トラクションが掛かる方向になります。
同レート、同自由長のスプリングで比較する場合、
より有効ストロークの長い(耐荷重が高い)スプリングの方がレートが安定して乗り心地が良くなります。
脚周りはまだまだ未知の領域が広がっているので、これからも調べます!
もう少し調べました
プリロード調整とスプリングの特性 ②
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