サスペンション独学ノート2019年まとめ④ 「加速度から荷重移動量を計算する」

2019年のまとめとして書き始めたのに気がついたら2020年になってしまいました、、、
大人の世界のお話なので 2019年12月41日って事にしてください
前回までの計算で加速gが求められたので加速gを重心位置の車両質量に作用させて
前後荷重移動量を求めます

計算式を調べると、、、
ピッチングモーメントは重心に加速力が作用する事で発生するモーメントなので

車体重量x加速g(モーメント)×重心高(アーム)
でピッチに作用する回転力(モーメントアーム)が求められ
回転力(モーメントアーム)を作用点となる前軸と後軸との距離(アーム)で割り戻せば 
作用点に働く力(モーメント)が求められます

式にしてみると
ピッチングモーメント=車体重量x加速gx重心高

コレで加速時に重心位置に作用するピッチング力を求められるので
ピッチング力を前軸と後軸荷重に加えると

前軸荷重=
(車両質量x重心から後軸までの距離/ホイールベース)-(重心高x車両質量x加速度/ホイールベース)

後軸荷重=
(車両質量x重心から前軸までの距離/ホイールベース)+(重心高x車両質量x加速度/ホイールベース)
※減速を計算する時は+と-を逆転させて荷重移動方向を修正します。

式はシンプルですが、問題は「重心高」
前後重心位置は軸重とホイールベースから求められますが
重心高さは車を傾けて重さを計らないと計算できませんので
お手上げ、、、、

ココまで来て「行き止まり」も悔しいのでいくつかの仮定を立てて近似値を決めて計算を進めます

仮定① 「重心高500mm以下ならスポーツカ―」
ちょっと重心高で検索したら引っかかったので一つの目安として押さえておきます
少なくとも生粋のスポーツカーじゃないセダンベースなので500㎜以上は確実

仮定② 片輪走行の映像から重心位置を見る 
E46の片輪走行映像に線を引いて重心位置を見ると
だいたいバンパーラインのちょっと上
sketch-1578618815669
これをE36の側面図から求めると
凄くおおざっぱだけど550㎜付近になります。
さすがにちょっと強引か、、、(笑)

仮説③
海外のサイトを調べて見つけた重心位置情報
おおざっぱなヤツはだいたい0.5m近辺
もう少し詰めた感じの情報で
BRZ/86:460㎜ 
S2000: 475㎜ 
Z4: 483mm
E36: 533mm
他の車種と比較しても重心が高いセダンベースのクーペボディなので533㎜は使えそう

サンルーフ装備を考えるともう少し上がるはずなので切り良く540㎜を使います
sketch-1578630157639

計算諸元は以下
車両走行重量; 1581kg
車両バネ上重量:1452kg
加速g: 0.52g
重心高さ :540mm
ホイールベース 2710mm
前後重心位置 1333mm(基準点は前軸)
前軸から重心位置までの距離 1333mm
重心位置から後軸までの距離 1377mm

これを式に代入すると
前軸荷重’=(1452×1377/2710)-(540×0.52x1452/2710)
後軸荷重’=(1452×1333/2710)+(540×0.52x1452/2710)

フロント軸重は738kg →587kg=151kg軸重が減り
リア軸重は714kg→865kg=151kg軸重が増える
って事になります
0.52gの加速gで151kgも荷重移動が発生しているんですね~

裏取り計算としてE36 M3Bのノーマルホイールレートで2速フルトルクの姿勢変化を見ると
ホイールレートは
フロントは2kgf/mm リアは3kgf/mm付近
荷重移動量を軸重から輪重にして
151kg/2 = 75.5kg

フロントは荷重が抜けるので
-75.5kg /2kgf/mm = -37.8mm
約38mm伸びて
リアは荷重が加わるので
+75.5kg /3kgf/mm = +25.1mm
約25mm縮みます
だいたい姿勢変化の経験イメージと合いますね~

実際はリアの「アンチスクワットジオメトリー」が効いて荷重移動しても殆どリアは沈まずに フロントだけが伸びた姿勢で加速しています。

シャコタンにするとリアのアンチスクワットジオメトリが弱まりリアを沈めて加速するので、
大切な駆動軸の縮みストロークが減少してトラクションを失いやすくなりますし
ブレーキング時も同じくフロントのアンチダイブジオメトリが弱まるのでノーズダイブが大きくなります。

以前調べた「荷重移動によるタイヤ性能」を合わせて考えると
重心高さに対して
ホイールベースが長い程ピッチモーメントが減少し
ドレッドが広いほどロールモーメントが減少するので
同じ加速度の運動をしても荷重移動量が少なくなるので同じ性能のタイヤでもグリップの減少が少なくなり限界が高くなります。

レース車両が「軽くて ホイールベースが長くてトレッドが広い」理屈はコレですね~
2019年のF-1だと
ホイールベースは3500~3700mm
トレッドは2000mm
全高は950mm以下
最低車両重量は640kg

メルセデスSクラスのホイールベースに
大型トラックのトレッド
ケーターハム スーパー7の車両重量と全高
って事ですね(笑)

他の市販車両ベースのレース車はサスペンションアーム類の変更でトレッドをレギュレーションの限界まで広げてロールモーメントを抑え込んでいます。

つまり
「軽い車は速い」って考え方は短絡的で
「軽くてホイールベース&トレッドが大きい車両」が速いって事になります。

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